いま、小売業界の勢力図が大きく塗り替えられようとしています。かつては地域インフラとして圧倒的な存在感を放っていたコンビニエンスストアを脅かす勢いで成長を続けるのが、ドラッグストア業界です。市場飽和がささやかれるなか、ウエルシアホールディングスの松本忠久社長は、驚くほど強気な姿勢を崩しません。
「コンビニが持つ機能はすべて取り込む。コンビニとぶつかれば勝てる」――。この力強い言葉の裏には、調剤薬局併設店という強力な武器と、1兆円売上という巨大な目標に向けた確固たる自信があります。2020年2月3日現在、同社は調剤を核としたビジネスモデルで、着実にその地歩を固めています。
コンビニの「次」を担うドラッグストアの戦略
では、具体的にどのようにしてコンビニを凌駕しようというのでしょうか。松本社長が掲げるのは、宅配便やATM、各種公共の手続きといった、いわゆるコンビニ機能のフル装備です。広々とした店内に豊富な品ぞろえ、そこに医薬品や調剤という専門性が加われば、もはや死角はありません。
実際、SNS上でも「薬局のついでに日用品や食料品まで揃うのが本当に便利」といった利用者の声が数多く見受けられます。単なる物販の場にとどまらず、地域の健康ステーションとして、さらには生活の利便性を集約した拠点として、ドラッグストアはコンビニの「先」を見据えているのです。
未来を切り拓く「リアルとネットの融合」
特筆すべきは、物理的な店舗の広さに縛られない次世代の店舗モデルです。松本社長は、都市型の小さな店舗であっても、端末を活用することで郊外型大型店と同等の品ぞろえを実現する仕組みを模索しています。「ネットで注文して翌日店頭受け取り」といった、リアルとネットの融合こそが、今後の成長を加速させるキーファクターとなるでしょう。
一方で、独自性の高いプライベートブランド(PB)の強化にも余念がありません。現在の6%という比率を2桁台へ引き上げることで、他社にはない価値を提供し続ける構えです。私自身、ドラッグストアが単なる薬の販売所から、消費者のライフスタイルを彩る魅力的な空間へと進化する姿に、大きな可能性を感じています。
※プライベートブランド(PB)とは、小売店や卸売業者が企画・開発し、自社ブランドとして販売する商品のことです。
変革期を迎える小売業界の行方
競合他社の経営統合など、業界の再編も加速しています。しかし松本社長に焦りの色は見えません。むしろ、この揺らぎこそが新たなチャンスであると捉えています。今後、生き残る陣営は明確に分かれていくはずです。付加価値を徹底的に追求するドラッグストアか、あるいは徹底したローコストを売りにするディスカウント店か。
中途半端な立ち位置の企業は淘汰され、2025年までには数社への集約が進むという見方は非常に現実的です。業界全体がデジタル活用やスーパーとの連携を模索する中で、ウエルシアがどのようにコンビニの牙城を崩し、新しい生活インフラの形を完成させていくのか。私たちは今、小売業界の歴史が動く瞬間に立ち会っていると言えるのではないでしょうか。
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