2020年2月3日現在、中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が、製造業や観光業など多岐にわたる分野で深刻な影響を及ぼしています。かつて2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際、現地で取材を重ねた経験と照らし合わせると、今回の中国の対応は改善された点があるものの、情報開示のあり方については依然として不十分と言わざるを得ません。
かつてシンガポール政府は、SARSに対して極めて強権的かつ徹底した対策を講じました。空港への赤外線感熱システムの導入や、徹底した隔離と監視体制を構築し、人権を制限してでも安全を優先させました。当時のゴー・チョクトン首相が語った「国境を封鎖すれば経済を殺してしまう」という言葉は、通商国家の生き残りをかけた重い決断だったのです。結果的に、この迅速な対応は国際的にも高く評価されました。
リスク管理としての「チャイナプラスワン」
一方で、SARSでの情報隠蔽を批判された中国の影響を受け、同年夏以降、「チャイナプラスワン」という言葉がメディアを賑わせるようになりました。これは、中国一国に頼らず、リスク分散のために他の国にも製造拠点を設ける戦略を指します。2005年の反日暴動以前から、中国の危機管理の不透明さが、企業にとっての拠点分散を後押しした歴史があるのです。
その後、2009年に日本国内で新型インフルエンザが確認された際、各企業は事業継続計画(BCP)に感染症対策を組み込み始めました。BCPとは、自然災害やテロ、感染症といった緊急事態に際しても、重要業務を中断させない、あるいは早期復旧させるための具体的な行動計画のことです。これは現代の企業経営において、もはや不可欠な基盤といえます。
グローバル化に対応した危機管理の再構築を
しかし、世界的にグローバル化が進む現在、海外拠点での対策は追いついていないのが実情です。2011年のタイでの大規模洪水など、海外の現地状況は常に変化しています。取材を通じて強く感じるのは、実際に感染が拡大している現地と、日本国内との間で生じる情報落差の深刻さです。この隔絶された孤立感が、駐在員や現地スタッフの不安を増幅させます。
SNS上でも「現地のリアルな状況が本社に伝わっていないのでは」「海外駐在員家族の安全確保を最優先すべきだ」といった危機感を募らせる声が多く上がっています。緊急時の情報開示や対応方針は国ごとに全く異なります。経営者の責務は、進出先の自然災害や感染症リスクを過小評価せず、それぞれの拠点ごとに個別のBCPを策定し、安全管理を従来以上に徹底することではないでしょうか。
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