中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の患者が、ついに日本国内でも確認されました。感染が判明したのは神奈川県に在住する30代の中国人男性です。男性は2020年1月3日から武漢市で発熱しており、2020年1月6日に日本へ帰国していました。しかし、空港の検疫をすり抜け、国内で感染が確認されるまでに9日間もかかっていたことが判明し、国境を越える感染症への対策に大きな課題が突きつけられています。
男性は帰国時、検疫所のサーモグラフィー検査を通過しています。これは、男性が解熱剤を使用していたため、サーモグラフィーが異常な体温を検知できなかったからだと見られています。SNS上では「解熱剤を使われたら水際対策なんて意味がないのではないか」「検疫のシステム自体を根本的に見直すべきだ」といった、現在の防衛体制に対する不安や厳しい批判の声が数多く上がっており、国民の関心の高さがうかがえます。
男性は2020年1月6日に医療機関を受診し、武漢への滞在歴も伝えていましたが、その時は帰宅となりました。その後、2020年1月9日に39度の高熱を出し、翌日に別の病院に入院しました。2020年1月15日夜、国立感染症研究所による「遺伝子検査」で陽性が確定しました。遺伝子検査とは、ウイルスの固有のDNAやRNAの配列を調べて感染の有無を特定する、非常に精度の高い先進的な検査手法のことです。
医療現場の報告基準と情報開示の進展
今回の事案では、医療機関から保健所への報告が2020年1月14日となりました。厚生労働省は、集中治療を要する重症患者らを対象とする「疑似症サーベイランス(感染症の兆候を監視する公的な制度)」の基準に照らせば適切な対応だったとしています。しかし、より迅速に事態を把握するために報告基準を緩和すべきか、議論を始める意向です。現在、国立感染症研究所は症状があれば重症でなくても保健所に相談するよう要請しています。
国際社会における情報共有のスピードは、過去の苦い教訓から確実に向上しています。2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際、中国政府は世界保健機関(WHO)への報告遅れを猛烈に批判されました。その反省から、新たな感染症を検知した際は24時間以内に通告する国際規則が作られ、今回は2020年1月11日のウイルス特定後、翌日には遺伝子配列が世界に公開されました。この迅速な開示は高く評価されるべきです。
武漢市では2020年1月14日時点で41人が発症し、1人が死亡、6人が重症化しています。感染の温床とされた海鮮市場は2020年1月1日に閉鎖され、2020年1月3日以降は新たな患者が出ていません。しかし、夫婦間での感染が疑われる事例もあり、現地当局は「ヒトからヒトへの感染」の可能性を否定せず調査を継続しています。今回の神奈川県の男性も、その海鮮市場には行っておらず、現地で肺炎患者と同居していたとのことです。
過度な恐れは不要もウイルス変異に警戒を
厚生労働省は、患者の家族や医療従事者といった「濃厚接触者」以外への感染拡大リスクは低いと判断しており、国民に対して「過度に恐れることなく、冷静に行動してほしい」と呼びかけています。筆者としても、現時点でパニックになる必要はないと考えます。私たちが今すべきことは、手洗いやうがいの徹底といった基本的な衛生管理であり、根拠のない噂に惑わされずに政府や専門機関からの正確な情報に耳を傾けることです。
一方で、専門家からは警戒を怠るべきではないという警鐘も鳴らされています。感染症の権威である東北大学の押谷仁教授は、かつてのSARSが流行の過程でウイルスが変異し、ヒトからヒトへ急速に感染が広がる凶悪なものへと変化した事実を指摘されています。今回の新型ウイルスも同様に変異する恐れが完全にゼロとは言えないため、病原体の性質を詳細に突き止める徹底的な調査が、一刻も早く進められることを切に願います。
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