2020年2月4日、化学業界に大きな衝撃が走りました。大手素材メーカーのダイセルが、4月から大規模な組織再編を断行すると発表したのです。これまで同社が採用してきた「素材別」のカンパニー制を廃し、顧客ニーズを捉えやすい「市場別」のビジネスユニットへと舵を切るという、実に大胆な決断です。2002年以来となるこの大改革は、業界全体が激動期を迎える中、生き残りをかけた同社の強い意志を感じさせます。
今回の再編では、従来の組織を「ヘルスケア」「スマート」「セイフティ」「マテリアル」という4つの戦略ビジネスユニット(SBU)に再構成します。例えば、化粧品や健康食品の原料はヘルスケアに、液晶や半導体部材はスマートにといった具合です。用途ごとに顧客窓口を一本化することで、製品の売り込みを強化するだけでなく、市場のトレンドをいち早く掴む体制を整えようとしています。
なぜ今、組織を変えるのか?
なぜダイセルはここまで抜本的な改革が必要なのでしょうか。その背景には、かつてのカンパニー制における反省があります。従来の体制では、既存製品の改良に力が割かれがちで、規模の小さい新規事業の育成がどうしても後手に回ってしまうという課題を抱えていたのです。素材産業を取り巻く環境は、中国をはじめとする海外勢の価格競争や、異業種が参入する「ゲームチェンジ」によって、急速に厳しさを増しています。
実際、2020年3月期の中期経営計画では、目標としていた売上高5000億円や営業利益700億円の未達が濃厚となっており、利益は4期連続の減益が見込まれています。液晶パネル用フィルムにおいて、より安価な素材への代替が進むなど、技術の穴を迅速に埋められない現状が数字に表れてしまいました。小河義美社長が「外部環境のせいにはできない」と語った通り、この苦境を打開するための組織改革と言えるでしょう。
「ビジネスユニット制」がもたらす変化
今回の改革の要は、各SBUに投資権限を委譲し、自律的な事業運営を促す点にあります。経営計画や予算を自ら決定し、スピード感を持って事業を推進できる体制を作るのです。これは、変化の激しい現代において非常に有効な戦略でしょう。単なる役割分担の変更ではなく、経営のあり方そのものを変えようとする姿勢には、心からの敬意を表したいところです。
SNS上でもこの動きに対し、「素材メーカーも単にモノを売るだけでなく、川下の市場を見据えた付加価値が求められる時代になった」「ダイセルのように危機感を持って柔軟に変われる企業が、結局は強い」といった前向きな意見が目立ちます。業界の常識を覆すようなスピード感こそが、これからの素材産業の命運を分けることは間違いありません。
他社に目を向けても、カネカが事業部門をドメイン(領域)制に再編したり、日本触媒と三洋化成工業が経営統合を決めたりと、化学業界全体がビジネスモデルの転換を迫られています。素材の供給体制を根本から見直し、次世代技術や加工技術をいち早く取り込む。そんな「守りから攻めへの転換」こそが、ダイセルが今回の再編で最も目指している姿なのでしょう。
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