2020年1月21日、文具業界に衝撃を与えたコクヨによるぺんてるの買収劇が、事実上の暗礁に乗り上げました。過半数の株式取得を目指した買い付けは期待した成果を得られず、ぺんてる側との提携協議も停滞しています。「株の塩漬け」という最大のリスクが現実味を帯びる中、なぜこれほど強気だったコクヨが苦境に立たされたのでしょうか。今回は、この騒動から浮き彫りになった非上場企業の買収に潜む難しさを紐解いていきます。
想定外だった「非上場企業」の結束力
まず最初の誤算は、ぺんてるという企業の特殊性にあります。上場企業と異なり、非上場企業の株主はOBや創業一族、取引先などで構成されることが多く、資本効率だけを追求する機関投資家とは全く異なる論理で動きます。彼らは数字上の利益よりも、会社の伝統や独立性を重んじました。コクヨは買収価格を最終的に4200円まで引き上げ、競合であるプラス側の3500円を大きく上回る条件を提示しましたが、それでも応募は限定的な結果に終わっています。
この状況に、ネット上でも驚きの声が上がっています。「非上場株特有の人間関係の深さを甘く見ていたのでは」「価格だけで動かない株主心理を見誤ったのが致命的だ」といった冷静な分析が相次ぎました。コクヨが買収方針を打ち出した後に株主名簿を取り寄せ、個別にレターを送るという手法も、後手に回ったという印象を世間に強く与える結果となってしまったようです。
迅速だった「ぺんてる・プラス連合」の守り
2つ目の誤算は、ぺんてる側と協力関係にあるプラスの非常に素早い対応力です。ぺんてるの和田優社長は、コクヨの動きを察知するよりも早く、水面下で株主たちと信頼関係を構築していました。プラスが買収の受け皿として設立した特別目的会社である「ジャパンステーショナリーコンソーシアム合同会社」の存在も、コクヨが買い付けを公表する前にすでに準備されていたもので、完全に先手を打たれていたのです。
3つ目は、コクヨ側の強硬な姿勢が招いた逆効果です。コクヨの黒田英邦社長は、子会社化した暁には現経営陣を刷新すると明言しました。これがぺんてるの株主には「強引な乗っ取り」と映り、結果として当初はコクヨへの売却を考えていた層まで、プラス側を支持する動きへと変えてしまいました。対話よりも力技が選ばれたことで、現場の反発を招いてしまったのは、経営の教訓として非常に重い事実でしょう。
今後の行方は?塩漬け株の出口戦略
現在、ぺんてる・プラス連合側は過半数を確保したとして「勝利宣言」を出し、コクヨとの提携協議を中止すると通告しました。コクヨは依然として筆頭株主ではあるものの、提携の道は閉ざされたように見えます。専門家からは、投資回収の観点から「提携できないのであれば、第三者に売却して他に投資すべきだ」という厳しい指摘も出始めています。というのも、130億円もの投資に対し、配当は年間わずか2500万円程度と、資本効率の面でコクヨ自身の株主から批判を浴びるリスクがあるからです。
一部のコクヨ関係者がイソップ童話の「北風と太陽」に例えたように、強引な手法は相手の心を固く閉ざしてしまいました。しかし、市場の一部には「投資会社などが高く買い取ってくれる可能性はゼロではない」という期待論も残っています。かつて話題を呼んだ「コクヨのヨコク」という言葉のように、閉塞感を打ち破るため、コクヨが今後どのような「次の予告」を打ち出すのか、目が離せません。
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