2020年2月5日現在、中国の湖北省武漢市を中心に発生した新型コロナウイルスによる肺炎の脅威が、世界中に波紋を広げています。連日ニュースで報じられる感染拡大の不安から、私たちの身の回りでも衛生用品の確保に向けた動きが活発化していると言えるでしょう。
実際のところ、TwitterなどのSNS上では「ドラッグストアの棚からマスクだけでなく、使い捨てのゴム手袋まで完全に消えてしまった」という悲痛な声が連日のように投稿されています。未知のウイルスに対する恐怖が、人々の防衛本能と購買行動に直結していることがよく分かる現象です。
このような逼迫した状況下で、マレーシアに拠点を置くゴム手袋製造の世界最大手「トップ・グローブ社」に、かつてないほどの注目が集まっています。同社の発表によりますと、ここ数日の間に中国方面から舞い込む注文量が、平常時の2倍にまで跳ね上がっているとのことです。
医療現場を支えるディスポーザブル製品の重要性
需要が急激に伸びている背景には、医療機関で使用されるディスポーザブル(使い捨て)手袋の圧倒的な不足があります。この手袋は、医療従事者を病原体から守り、二次感染を防ぐための「個人防護具(PPE)」として、命を守る防護壁の役割を果たすものです。
同社によれば、この医療用手袋を強く求める動きは中国本土のみならず、香港や台湾といった周辺地域でも爆発的に高まっています。この現象を株式市場の投資家たちも見逃しておらず、同社の株価は2019年12月末の時点と比較して、すでに20パーセント以上も高い水準へと急騰しました。
当初の計画では、2020年8月期の通期における販売実績は、2019年8月期と比べて10パーセントから15パーセントの増加に留まると予測されていました。しかしながら、今回のパンデミックの様相を呈する事態を受け、その見通しは今後大きく上方修正される可能性が高いと見られています。
将来の供給体制と筆者の見解
世界的な需要増を見据え、トップ・グローブ社は現在の年間705億枚という生産能力を、2021年12月末までに914億枚へと約30パーセント拡大する野心的な計画を打ち出しています。これまで同社の主力市場は、北米や西欧、そして日本などの先進国が半分以上を占めてきました。
一方で、日本を除くアジア地域における売り上げは全体の14パーセント程度に留まっていました。ただ、今回の感染拡大をきっかけにアジア圏での衛生意識が劇的に高まることは疑いようがなく、とりわけ巨大な人口を抱える中国市場の長期的な成長ポテンシャルは計り知れません。
私個人としては、このような未曾有の危機において、特定地域の需要過多が世界的なサプライチェーン(製品の調達から消費までの供給網)を機能不全に陥らせないか危惧しています。各国が利己的な買い占めを避け、本当に必要な最前線の医療現場へ迅速に物資が届く仕組みを構築することが、今最も求められているのではないでしょうか。
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