2020年2月6日現在、中国湖北省武漢市では新型コロナウイルスによる肺炎の猛威が収まる気配を見せていません。中国政府は事態を重く見て、わずか10日間という驚異的なスピードで「雷神山医院」を新設しました。2月2日に完成した「火神山医院」と合わせ、武漢市内の病床数は合計で約1万床まで拡大されることとなります。この病院建設は、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際、北京市が7日間で病院を建設した手法をモデルにしています。
しかし、これほどの緊急対応を行ってもなお、医療現場の逼迫(ひっぱく)は改善の兆しを見せていません。SNS上やメディアを通じて、武漢市民からは「発熱しているのに診察すら受けられない」「死を待つしかないのか」といった、悲痛な叫びが絶え間なく発信されています。感染の拡大スピードが病院の収容能力を完全に上回っており、医療体制が実質的に機能不全に陥っている様子が浮き彫りとなっています。
医療崩壊の深層と市民の苦境
この医療崩壊の背景には、検査キットの決定的な不足があります。武漢市で家族と共に発熱症状を抱える女性は、適切な検査を受けられず、自分が本当に新型コロナウイルスに感染しているのかすら分からないまま不安な日々を過ごしています。病院へ行っても検査を受けられない状況は、隔離すらされずに感染が家庭内に拡大する「家庭内二次感染」のリスクを助長しており、極めて危険な状態です。
2020年2月5日午前0時の時点で、武漢市の感染者数は8351人に達し、前日から約2000人近く増加しました。病院では廊下やロビーに簡易ベッドを並べることで対応していますが、それでも患者の数には遠く及びません。注目すべきは死亡率の高さです。中国本土全体の死亡率が2.0%であるのに対し、武漢市では4.3%と突出しています。この高い死亡率は、医療設備やスタッフが圧倒的に足りず、適切な治療を受けられないことによる「医療の質の低下」が原因であると政府も認めています。
私は、感染症対策において最も重要なのは、患者を孤立させない医療環境の確保と、早期発見のための検査体制だと考えます。現在の武漢の状況は、個人の自助努力ではどうにもならない段階に達しています。急速なインフラ整備も重要ですが、今後はいかに効率的なトリアージ(重症度に応じた優先順位付け)を行い、限られた酸素吸入器や医療スタッフを重症者に集中させるかという、非常に困難で冷徹な判断が求められる状況でしょう。
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