2020年2月6日現在、世界中で拡大を続ける新型コロナウイルスによる肺炎に対し、日本の感染封じ込め策はまさに正念場を迎えています。流行の初期段階において、医療機関や水際でいかに迅速に感染者を特定できるかが、今後の日本全体の命運を握っていると言っても過言ではないでしょう。政府は検査の網を広げ、警戒を強めていますが、急速に増大する検査件数に対して、現在の医療体制が悲鳴を上げ始めている現状が浮き彫りになっています。
その象徴的な事案が、横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で発生した集団感染です。2月1日に元乗客の感染が判明して以来、2月3日から検疫官が乗り込み、乗客乗員約3700人全員を対象に検疫が実施されました。PCR検査は喉の粘液などから検体を採取し、ウイルス特有の遺伝子が含まれているかを特定する手法ですが、現在、地方衛生研究所など全国の拠点で行われています。
高度な技術を要するPCR検査は、以前は結果が出るまで半日以上を要していましたが、現在では「リアルタイムPCR」という高速な手法により、4から6時間に短縮されました。しかし、全国約80の検査拠点をもってしても、通常時の処理能力は1日あたり約1500件程度に限られます。そのため、数千人規模の乗客全員を検査することは物理的に非常に困難であり、船内待機措置と並行して、リスクの高い方への優先的な対応が求められています。
求められる迅速な判断と検査体制のジレンマ
この事態を受け、感染症の診断を劇的に早める「迅速検査キット」の開発が急務となっています。しかし、開発から正式な国の承認を得るまでには、通常数カ月を要するのが通例です。過去の重症急性呼吸器症候群(SARS)の事例では、開発に4カ月、承認に6カ月もの期間を要しました。医療現場からは、インフルエンザ検査のように手軽に利用できる状況には遠いのではないかという懸念の声も上がっています。
厚生労働省は検査対象を徐々に拡大していますが、ここには重大なジレンマが存在します。対象を広げれば広げるほど、本当に医療の助けを必要とする重症者が後回しにされるリスクが高まるからです。感染症法の指定感染症に該当したことで強制的な入院措置も可能となりましたが、一人ひとりの濃厚接触者を追跡する保健所の現場負担は限界に達しており、慎重な舵取りが求められています。
専門家である川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、日本の検疫や検査が一定の効果を上げているとしつつも、過度な検査体制の拡大は破綻を招きかねないと警鐘を鳴らしています。SNS上でも「医療従事者の負担が心配」「検査数ばかりが議論されるが、その後の治療体制はどうなっているのか」といった不安の声が多く寄せられています。これ以上感染を拡大させないためには、検査の目的を「完全封じ込め」から「流行の長期化を抑えること」へとシフトさせるべきだという意見は、非常に説得力があると感じます。
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