ロボット産業や最先端の製造業を陰で支える企業に、今、大きな転換期が訪れています。精密制御に欠かせない部品を手掛けるハーモニック・ドライブ・システムズが、2020年2月10日に発表した2019年4月から12月期の連結決算は、最終損益が5億3600万円の赤字に転落したことが判明しました。前年の同じ時期には91億円もの黒字を叩き出していた同社にとって、この期間での最終赤字は実に10年ぶりの事態となります。
今回の業績悪化を招いた最大の要因は、世界規模で巻き起こっている米中貿易摩擦にあります。激化する市場の緊張感を背景に、中国の製造業を中心に設備投資を控える動きが急速に広がりました。この影響をダイレクトに受けてしまったのが、同社の主力製品である「精密減速機」です。スマートフォン特需が一服したことも重なり、世界的な工場自動化の波が一時的に足踏みしている現状が浮き彫りになりました。
精密減速機とは、モーターの回転速度を落としながら驚異的な力を生み出し、ロボットの関節などを緻密に動かすための「心臓部」とも言える重要部品です。SNS上でもこのニュースは注目を集めており、「あの技術力のある企業すら赤字になるとは、製造業の冷え込みは想像以上だ」と驚く声が上がっています。その一方で、在庫調整が長引いている現状を冷静に分析し、今後のトレンドを見守る産業ファンの声も少なくありません。
実際の数字を見ると、売上高は前年同期比で43%減の295億円、本業の儲けを示す営業利益は95%減の7億5400万円と、厳しい現実が突きつけられています。前期に多くの取引先や代理店が先を見越して発注していたため、その在庫を消化する調整期間が予想以上に長引いている模様です。しかし、こうした逆境の中でも、暗闇の先にはうっすらと光明が差し込み始めている点も見逃せません。
注目すべきは、直近である2019年10月から12月期の受注状況でしょう。連結受注高は前年同期比で16%減にとどまり、2019年7月から9月期の56%減という劇的な落ち込みから比べると、マイナス幅が大幅に縮小しているのです。同社の丸山顕取締役も「半導体関連の投資が持ち直してきている」と語っており、どん底だった局面からようやく脱出し、潮目が変わりつつある手応えを示しています。
なお、2020年3月期通期の業績見通しについては、従来からの予想を据え置く形となりました。売上高は前期比46%減の367億円、最終損益は15億円の赤字を見込んでいます。前年に116億円の黒字を記録していたことを思えば苦しい着地となりますが、半導体需要の回復というポジティブな要素を材料に、ここからの復活へ向けた地盤固めの時期と言えるはずです。
筆者は、今回の赤字決算を悲観的に捉えすぎる必要はないと考えています。同社が持つ独自のハイレベルな技術力は、今後の自動化社会において絶対に欠かせない唯一無二の存在だからです。一時的な外的要因に振り回されつつも、受注の回復傾向が見られる点こそが強さの証明でしょう。苦境に耐え抜いた同社が、半導体バブルの再来と共に再び力強く躍進する未来を大いに期待しています。
コメント