日本のスポーツウェア界を牽引してきた名門ブランド「デサント」が、大きな岐路に立たされています。2020年2月6日、同社は2020年3月期の連結最終損益が10億円の赤字に転落する見通しであることを発表しました。前年の39億円の黒字から一転しての赤字であり、実に見事な黒字から18年ぶりとなる悲痛な最終赤字へ沈むことになります。インターネット上やSNSでは「デサントほどのブランドがここまで苦戦するとは」「韓国の不買運動の影響はやはり甚大だ」といった驚きと懸念の声が数多く噴出しています。
今回の業績下方修正の主な要因は、不採算となっている海外子会社の整理に伴う特別な損失の計上です。デサントは山道を走るためのトレイルランニングシューズなどで知られる英国の「inov-8(イノヴェイト)」ブランドを手掛ける子会社5社を売却し、スキー用品を展開するカナダの子会社を清算することを決定しました。これらに伴い、約17億円の「特別損失」を計上する見込みです。特別損失とは、企業の通常の営業活動とは無関係に、その期だけに例外的に発生した非日常的な巨額の損失のことを指します。
さらに投資家たちに追い打ちをかけたのが、年間配当を「無配」、つまり株主への配当金をゼロにすると発表した点です。これに対しSNSでは「無配転落は株主として非常に厳しい」「株価への影響が心配だ」といったリアルな悲鳴が上がっています。同日発表された2019年4月1日から2019年12月31日までの連結売上高は、前年同期比8%減の928億円、純利益は38%減の17億円という厳しい着地となりました。大阪市内で開かれた記者会見において、土橋晃取締役は厳しい表情で減収減益の背景を語りました。
土橋取締役の説明によると、業績悪化の大部分は韓国市場における極端な販売不振によるものです。2019年夏に日韓関係が急速に悪化したことを受け、現地では日本製品への不買運動が激化しました。韓国子会社の決算期は日本国内の本体とズレがあるため、不買運動の影響が今回の決算で初めて鮮明に反映された形です。2019年7月以降は現地での売上高が30%減少するという危機的なトレンドが続いており、デサントにとって韓国市場がいかに大きな依存度であったかが浮き彫りになりました。
私は、今回のデサントの決算は「特定の海外市場への過度な依存」がもたらす地政学的リスクの怖さを象徴していると考えます。これまでは韓国での成功が同社の成長を支えていましたが、政治的対立という予測不可能な事態によって一瞬にして最大の弱点へと変わってしまいました。企業経営において、展開する国や地域を分散させる重要性が改めて証明されたと言えるでしょう。厳しい局面を迎えているデサントですが、現在は筆頭株主である伊藤忠商事の主導のもと、新たな生存戦略を模索しています。
敵対的TOB(株式公開買い付け)という激しい経営権争いを経て就任した伊藤忠出身の小関秀一社長は、次なる成長の柱として「中国事業の拡大」を強力に掲げています。具体的には、中国のスポーツ用品大手である安踏体育用品(ANTA)との協業を進めていますが、現状ではまだ具体的な事業計画を社会に示せていません。SNSでも「伊藤忠の手腕で中国市場をどこまで開拓できるかが勝負の分かれ目」「ANTAとの交渉を早く形にしてほしい」と、期待と不安の入り混じった意見が交わされています。
しかし、この中国戦略の前方にも暗雲が立ち込めています。足元で猛威を振るい始めている「新型肺炎」の感染拡大により、現地での経済活動や消費行動にどれほどの悪影響が出るのかが全く見通せない状況だからです。お家芸だった欧米の子会社を切り離し、不買運動に揺れる韓国から巨大な中国市場へと舵を切るデサントですが、その道のりは決して平坦ではありません。伊藤忠商事という強力な後ろ盾を得た同社が、この未曾有の経営危機をどのように乗り越えていくのか、今後の動向から目が離せません。
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