米国の調査会社IDCが、2019年の中国におけるスマートフォン出荷台数を発表いたしました。その結果は前年比7.5%減の3億6670万台となり、3年連続で市場規模が縮小していることが明らかになりました。世界最大の規模を誇る中国のスマホ市場ですが、かつてのように年間4億台を超える勢いは見られません。すでに多くの人々に行き渡ったことで、市場が飽和状態にあると考えられます。こうした状況では、各メーカーが新しい需要を掘り起こすのは容易ではないでしょう。
このような市場の冷え込みをものともせず、圧倒的な存在感を示したのが華為技術(ファーウェイ)です。同社の2019年における中国国内のシェアは38.3%に達し、前年の26.5%から10ポイント以上も急上昇しました。米国政府による事実上の輸出禁止措置を受け、海外での販売が難しくなった同社は、戦略の軸足を国内へと大きくシフトしたのです。SNS上では「ピンチをチャンスに変える底力が凄まじい」といった、驚きと称賛の声が多数寄せられています。
ファーウェイの躍進を支えた背景には、中国国内での強力な販売促進活動があります。さらに、米国の制裁に立ち向かう企業を応援しようとする、消費者の「愛国的な購買」も追い風となりました。自国ブランドを支えようとする国民の熱意が、この驚異的なシェア拡大を実現したと言えます。政治的な逆風が、皮肉にも国内市場での爆発的なヒットを生み出す強力なエンジンとなった模様です。逆境におけるブランド戦略の見事な成功例ではないでしょうか。
一方で、他社の苦戦が目立つ結果となりました。2位のvivo(ビボ)はシェア18.1%、3位のOPPO(オッポ)は17.1%にとどまり、いずれも前年より数字を落としています。また、米国アップルもiPhoneの新機種を投入したものの、シェア拡大には至りませんでした。これほどまでにファーウェイ一強の構図が進むと、他社が巻き返すのは極めて困難です。デザインや機能の差別化だけでは、今の中国消費者の心を動かすのは難しいのかもしれません。
さらに気になるのが今後の見通しです。IDCは、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大の影響を懸念しています。この状況が続けば、2020年の中国国内のスマホ出荷台数は、2019年比でさらに4%減少すると予測されました。市場の飽和に加え、公衆衛生上の危機がサプライチェーンや消費行動に追い打ちをかける形です。ただ、5G(第5世代移動通信システム)という次世代通信の普及が、新たな買い替え需要を刺激する可能性にも注目したいところです。
編集部としては、ファーウェイの持つ技術力と、危機をエネルギーに変える強靭なブランド力に改めて感銘を受けました。しかし、一社にシェアが集中しすぎる状況は、市場全体の多様性や健全な競争という観点からは少し心配でもあります。今後は、他メーカーがどのような革新的な製品で対抗していくのかが、市場活性化の鍵を握るはずです。混沌とする世界情勢の中で、中国スマホ市場がどのように進化していくのか、これからも目が離せません。
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