中国のスタートアップ企業で、子どもたちの創造性をロボットの自作を通じて育む教材を提供しているメイクブロック(Makeblock)が、今、家庭向け事業の拡大に大きく舵を切ろうとしています。これは、最先端技術を巡る米国との激しい主導権争いを背景に、中国国内で理系教育への関心が異例なほど高まっていることが大きな追い風となっているためでしょう。今回は、創業者の王建軍・最高経営責任者(CEO)に、その戦略と現地の熱気について詳しくお話を伺いました。
中国政府は、将来的な国際競争力を維持するという明確な目標のもと、2015年頃から人工知能(AI)やプログラミング教育を重視する政策を打ち出しました。これを受けて、各省政府が多額の予算を投じる実施計画を策定し、この分野は瞬く間に「非常に熱い」市場へと変貌を遂げたのです。その結果、多数の新興企業が誕生し、投資家たちの関心を一身に集めています。
メイクブロックが提唱するのは、電子工作などを通じて子どもの発想力を養うSTEAM教育です。このSTEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせた造語で、それぞれの分野を統合的に学ぶことで、実社会での問題解決に役立つ総合的な能力を育むことを目的としています。中国では学校での導入が進み、一般消費者の間でもこの教育に対する認知度が広がりを見せている状況です。
王CEOは、かつては一般教科で優秀であれば大企業への就職が保証されていた時代があったものの、これからの時代は多くの仕事がAIによって代替されるという危機感を語っています。だからこそ、ロボットの仕組みを理解し、実際に作り上げることを通じて育まれる創造力や問題解決能力が、今後ますます重要になると強調されていました。私も、この創造性こそが、未来の社会を生き抜くための最も重要なスキルであると強く感じます。
今後は、これまでの主な顧客であった潤沢な予算を持つ学校だけでなく、放課後や家庭でも手軽に取り組めるロボット工作キットの製品開発に力を入れていく方針だそうです。すでに幼稚園向けの製品も発売するなど、市場を開拓するための商品開発を精力的に続けています。深センで2013年(平成25年)に創業されたメイクブロックは、センサーやコントローラーを内蔵した部品を自由に組み合わせてロボットを自作する教材キットを手掛けており、2018年(平成30年)12月期の売上高は約2億元(約31億円)に達し、すでに日米欧にも子会社を持つグローバル企業へと成長しています。
世界情勢が理系ブームを加速、スタートアップの苦悩と希望
しかし、こうした成長の勢いにもかかわらず、米中貿易戦争の影響はスタートアップ企業にも及んでいます。経済の先行きが不透明になったことから、2018年(平成30年)以降、投資家たちは投資に対して慎重な姿勢を見せるようになり、スタートアップにとっては資金調達が難しくなりました。メイクブロックも例外ではなく、一部の投資を見合わせ、なるべく早く利益を出すことに注力しているとのことで、この厳しい資金環境は、多くの企業にとって共通の苦悩でしょう。
一方で、貿易戦争を機に、中国政府が基礎的な技術開発の重要性を再認識したことは、長期的に見れば中国のハイテク産業の発展に繋がる可能性がある、と王CEOは前向きに捉えています。特に、米国が華為技術(ファーウェイ)のような高い技術力を持つ企業を排除しようとすることは、中国国内の人々にとって、自国の技術力の高さを再認識させるとともに、より一層の技術開発への意欲を刺激する「良い刺激」になった、と感じているようです。この理系ブームと技術重視の潮流は、一時的なものではなく、国の未来をかけた大きなうねりとなっているのは間違いないでしょう。
このメイクブロックの取り組みは、日本でも大きな反響を呼んでいます。SNS上では、「子どもの頃にこんな教材があったら、もっと理系が好きになっていただろう」といった羨望の声や、「日本もプログラミング教育に力を入れているが、中国のスピード感は桁違いだ」といった、その熱量への驚きの意見が多く見受けられます。ロボット教材という具体的なツールを通じて、未来のイノベーターを育成しようとするメイクブロックの挑戦は、技術立国を目指す世界中の国々にとって、非常に示唆に富む事例となるでしょう。
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