楽天は2020年2月13日に、2019年12月期の決算を発表いたしました。連結売上高は過去最高を記録したものの、営業利益は前の期と比べて5%も減少しています。結果として、8年ぶりの最終赤字に転落する事態となりました。SNS上では「楽天ポイントの恩恵があるから応援したい」「携帯事業への参入はハードルが高そうだ」といった、期待と不安が入り混じった声が数多く飛び交っています。まさに現在の同社は、大いなる成長と危うさの分岐点に立たされていると言えるでしょう。
主力のネット通販である「楽天市場」などは好調を維持しています。消費税増税前の駆け込み需要を追い風に、国内電子商取引の流通総額は3兆9000億円に達しました。さらにクレジットカードや銀行、証券などを手掛ける「フィンテック事業」も黒字を確保しており、グループの底力を示しています。しかし、これらの利益を相殺するほど重くのしかかっているのが、携帯電話事業への巨額の先行投資です。自前の通信網を構築するための基地局整備には、想像以上のコストが膨らんでいます。
楽天は2020年4月に、独自の通信網を持つ「第4の携帯キャリア」として本格参入を予定しています。自社回線で通信を届けるためには、電波を中継する基地局というインフラ設備が全国に欠かせません。この整備費用が膨らんだ結果、モバイル事業の赤字は前の期から約4.4倍の600億円に急拡大しました。三木谷浩史会長兼社長は「世界と戦うために不可欠な投資だ」と強気な姿勢を崩しません。1億人以上の会員基盤を武器に、低料金のスマホ事業で「楽天経済圏」をさらに広げる狙いです。
ただし、早期の黒字化への道のりは決して平坦ではありません。総務省へ提出した計画によると、2026年3月までに2万7000カ所以上の基地局を開設する必要があり、今後も莫大な設備投資が続きます。また、東京や大阪などの大都市圏以外では、KDDIの回線を一時的に借りる「ローミング(相互乗り入れ)」という仕組みを利用します。この回線利用料が1ギガバイトあたり約500円と高額であるため、仮に低価格な料金プランを打ち出せば、当面は利益を出すことが極めて難しい構造となっています。
さらに、収益の柱である楽天市場でも新たな課題が浮き彫りになりました。楽天は2020年3月18日から、3980円以上の購入で送料無料を統一する方針を発表していたのです。これに対し「送料の負担が店舗側に押し付けられ、利益が圧迫される」として一部の出店者が猛反発しました。事態を重く見た公正取引委員会は、2020年2月10日に独占禁止法違反の容疑で楽天への立ち入り検査に踏み切っています。これを受けて三木谷氏は、表現を「送料込み」へ修正する意向を表明しました。
独占禁止法とは、企業間の公正で自由な競争を妨げる行為を禁止する法律です。今回のケースでは、市場で強い立場にある企業が、弱い立場の取引先に不利益を強いる「優越的地位の乱用」に当たるかどうかが焦点となっています。楽天が成長を続けるためには、出店者との信頼関係が何よりも不可欠です。独善的な改革と捉えられないよう、今後は丁寧な対話と、出店者が割安で利用できる自社物流センターの提供といった、具体的なサポート体制の構築が強く求められるでしょう。
現在の楽天は、祖業であるネット通販の逆風と、第2の創業となる携帯事業への挑戦という、二つの大きな壁に直面しています。巨大なプラットフォーマーとして、消費者への利便性提供と出店者への配慮をいかに両立させるかが、今後の命運を握るはずです。三木谷氏のリーダーシップのもとで、この難局をどう乗り越えていくのか注目が集まります。多くのユーザーを抱える企業だからこそ、短期的な赤字を恐れずに未来への投資を成功させ、私たちに新しいワクワクを届けてくれることを期待しています。
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