世界の物流を揺るがす大きな変化が訪れています。米国の調査機関であるデカルト・データマインが発表したデータによると、2019年12月のアジアから米国へ向けた海上コンテナ輸送量は130万2275個(20フィートコンテナ換算)を記録しました。この数字は前年の同じ時期と比べて16.3%もの大幅な減少を示しており、マイナスを記録するのはこれで4ヶ月連続となります。SNS上でも「米中対立の影がリアルに数字に出てきた」「今後の景気後退が心配」といった、先行きを不安視する声が多数見受けられます。
今回の落ち込みを牽引してしまった主因は、長期化する米中貿易摩擦に他なりません。世界経済の2大巨頭が関税を掛け合うこの摩擦は、サプライチェーンに深刻な打撃を与えています。その影響を強く受けた中国発の輸送量は76万827個へと落ち込み、前年同月比で22.2%減という厳しい結果になりました。なんと11ヶ月連続で前年の実績を割り込んでおり、製造業の現場や輸出企業がどれほど苦境に立たされているかが浮き彫りになっています。
ここで注目すべきは、アジア全体における中国の圧倒的な存在感でしょう。中国発の貨物はアジアから米国へ向かうコンテナ輸送量全体の約6割という莫大なシェアを占めています。そのため、中国発の荷動きが鈍化すると、アジア全体の輸送量を一気に押し下げてしまう構造になっているのです。ここで使われている「20フィートコンテナ換算(TEU)」とは、国際物流で貨物量を測る標準的な基準単位であり、船の積載能力や港の取扱量を表す際によく用いられます。
日本の国内経済に目を向けると、興味深い動きが同時期に観測されています。三鬼商事の調査では、2020年1月時点の東京都心5区のオフィス空室率は1.53%となり、前月比で0.02ポイント低下しました。企業のオフィス需要は依然として旺盛で、空室がほとんどない大盛況な状況が続いています。国際物流の冷え込みとは対照的に、国内のビジネス中心地ではまだ活発な投資や拡大の動きが見られ、二極化が進んでいるような印象を受けます。
さらに労働市場においては、人手不足を背景とした労働賃金の上昇トレンドが顕著です。リクルートジョブズなどの調査によれば、2020年1月の三大都市圏におけるアルバイト・パートの平均時給は前年同月比36円増の1082円を記録しました。また、2019年12月の派遣社員の時給も前年同月比50円増の1569円へとアップしています。働く側にとっては嬉しい変化ですが、企業にとっては採用コストや人件費の負担が年々重くなっている実態が見て取れるでしょう。
物流の最終ランナーである国内トラック運賃も、人手不足や燃料費の影響で高騰しています。トラボックスのデータによると、2020年1月の東京から大阪間の運賃は、4トン車で5万3429円(前年同月比4.7%増)、10トン車で7万3000円(同4.9%増)へ上昇しました。これは片道の空き便(帰便)を利用した平均値ですが、それでも運ぶコストが上がっていることは確実です。運送業界の負担軽減や効率化は、国を挙げた喫緊の課題と言えます。
編集部としては、この国際物流の停滞を「一過性のニュース」として片付けるべきではないと考えます。アジアからの輸送量減少は、アメリカ国内の消費財不足や物価上昇を招き、巡り巡って日本を含む世界的な景気減速を引き起こすトリガーになりかねません。国内の雇用やオフィス需要が今は堅調であっても、グローバル経済の歯車が狂えば、その波は必ず時間差で国内にも押し寄せます。私たちは今こそ、サプライチェーンの多角化など次の一手を打つべきでしょう。
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