南米の雄、ブラジルの自動車市場が力強い復活を遂げています。世界的な自動車市場が停滞する中、ブラジル自動車工業会が発表したデータによると、2019年の生産台数は前年比2.3%増の294万4988台、販売台数は8.6%増の278万7850台を記録しました。これで3年連続のプラス成長となり、かつての深刻な不況という長いトンネルを抜け出し、市場には確かな光明が差し込んでいます。
SNS上でも「ブラジルの活気が戻ってきた」「新車が増えると景気の良さを実感する」といった現地からのポジティブな声が目立ちます。2000年代に新興経済国「BRICs」の一角として脚光を浴びた同国は、2013年に370万台超えという絶頂期を迎えました。しかし資源価格の急落と政治の混乱が重なり、2016年には市場が4割以上も縮小する壊滅的な打撃を受けた過去があります。
そこからのV字回復を支える最大の起爆剤が、歴史的な「低金利」政策です。ブラジル中央銀行は2020年2月に、政策金利を過去最低の4.25%へと引き下げました。政策金利とは、中央銀行が一般の銀行に融資する際の基準金利のことで、これが下がるとマイカーローンなどの金利も安くなります。この金融緩和のおかげで、一般消費者が格段に車を買いやすい環境が整ったのです。
国際通貨基金も2020年1月20日に経済見通しを上方修正し、同国の成長率を2.2%と予測しています。この景気好転により、個人向けだけでなく、企業が利用するリース車や大型トラックなどの商用車ニーズも爆発的に跳ね上がりました。自動車工業会は2020年の販売台数が305万台に達すると強気の試算を弾き出しており、実現すれば6年ぶりの大台突破となります。
しかし、手放しでは喜べない懸念材料も潜んでいます。それは、国内の販売好調に対して「生産」の伸びが追いついていない点です。原因は最大の輸出先である隣国アルゼンチンの経済危機にあります。アルゼンチンでの通貨下落に伴う市場縮小により、ブラジルからの輸出は急ブレーキがかかりました。現地の日系メーカーからは部品の輸入コスト増を嘆く声も漏れています。
編集部の視点としては、現在のブラジル市場はかつてのような爆発的なバブルではなく、低金利に支えられた「実需による健全な回復」へとシフトしていると感じます。輸出の鈍化という逆風はあるものの、世界経済が不安定な今、この安定した内需の強さは国際的にも貴重な存在です。各メーカーにとって、ブラジルが再び重要な戦略拠点になることは間違いないでしょう。
コメント