インターネットを揺るがす注目の裁判に、大きな動きがありました。ウェブサイトを閲覧している人のパソコンを使い、無断で暗号資産(仮想通貨)をマイニングするプログラムを設置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われていた男性の控訴審判決が、2020年2月7日に東京高裁で言い渡されたのです。一審の無罪判決から一転、罰金10万円の有罪判決が下され、ネット上でも驚きの声が広がっています。
そもそも「マイニング(採掘)」とは、仮想通貨の取引データを承認する作業に協力し、その報酬として新たな通貨を得る仕組みのことです。非常に膨大な計算処理が必要となるため、今回の事件では「コインハイブ」というプログラムが使われました。これはサイト訪問者のパソコンの処理能力を無断で拝借し、暗号資産の「モネロ」をマイニングするもので、サイト運営者が収益を得るための新たな広告手法として当時注目されていた技術です。
SNSではこの判決に対し、「勝手にCPUを使われるのは不快だから有罪は当然」「ウェブ広告だって勝手に動いているのに、なぜこれだけが罪になるのか」といった賛否両論の意見が飛び交い、トレンド入りするほどの盛り上がりを見せています。ユーザーの不利益を重視する声がある一方で、技術的な線引きの難しさに疑問を抱くクリエイターも少なくありません。
曖昧なウイルスの定義とIT技術開発への懸念
裁判の争点は、ユーザーの意図しない動きをするプログラムが、法律上の「コンピューターウイルス」に該当するかどうかという点でした。東京高裁の栃木力裁判長は、閲覧者に一定の不利益を与える上に事前の表示もないため、社会的な信頼を損なう悪質なウイルスであると指摘しています。しかし、一般的なアクセス解析ツールや自動再生される動画広告なども、閲覧者の許可なく裏で動いているのが実情です。
この判決に対し、日本ハッカー協会の杉浦隆幸代表理事は、違法かどうかの基準が依然として不透明であると危機感を募らせています。現在の法律の定義では、どのようなプログラムが摘発されるのかが分かりにくく、このままでは日本のエンジニアが新しい技術を開発することに躊躇してしまう可能性すら否定できません。技術の発展を妨げないためにも、明確な法改正を求める声が上がっています。
利便性や新しいビジネスモデルの創出と、ユーザーのセキュリティを守ることのバランスは非常に繊細です。今回の逆転有罪判決は、悪質な行為を取り締まる一歩になるかもしれませんが、過剰な規制は日本のIT競争力を削ぐ刃にもなり得ます。裁判所には、技術の本質を見極めたより慎重な判断を期待するとともに、時代に即した明確なルールの策定が急務であると考えます。
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