2019年5月28日までに、埼玉県川口市立中学校でいじめを受け不登校となられた当時16歳の元男子生徒の方が、インターネット掲示板において実名を挙げられて誹謗中傷されたとして、書き込んだとされる2名に対して、合計およそ160万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地方裁判所に提起されました。これは、匿名性の高いネット空間での心ない言葉に対し、毅然とした態度で立ち向かう、勇気ある行動と言えるでしょう。
この元生徒は、2015年に中学校へ入学されて以降、所属されていたサッカー部内で首を絞められるなどの深刻ないじめに遭い、その結果、2016年から不登校を余儀なくされていました。学校での苦しみに加え、2017年10月頃からは、インターネット掲示板という新たな場所で、元生徒さんに対する誹謗中傷の書き込みが約2,800件にもわたり相次ぐという、二重の苦痛を強いられることになってしまったのです。
インターネット掲示板などでの匿名での書き込みに対し、被害者が法的な措置を取るためには、まず、書き込みをした人物を特定する必要があります。そこで元生徒さん側は、2018年6月、特に悪質な4件の書き込みについて、プロバイダー3社に対し、書き込んだ人物の氏名や住所などの情報を開示するよう求める発信者情報開示請求訴訟を起こされていました。
プロバイダーとは、インターネット接続サービスを提供する事業者、例えばNTTやKDDIなどのことを指す専門用語です。この訴訟の結果、東京地方裁判所は2018年12月、問題とされた4件の書き込みがプライバシー侵害に当たると認め、プロバイダーに対し、元生徒さん側に情報を開示するように命じる判決を下しました。この開示された情報に基づき、元生徒さん側は、そのうちの3件の書き込みを行った2名に対して、今回の損害賠償請求という形で本訴訟に踏み切られたのです。
このニュースは、SNSで瞬く間に拡散され、大きな反響を呼びました。「いじめ被害の上にネット中傷なんて、本当にひどい」「書き込んだ人が特定されて良かった。絶対許すべきではない」と、被害者への同情と加害者への厳しい意見が圧倒的多数を占めています。一方で、「ネットの書き込みが訴訟につながるということが広く知られてほしい」と、匿名性の幻想に対する警鐘を鳴らす声も多く見受けられました。
私自身の意見として、今回の提訴は、インターネット上でのいじめや誹謗中傷を決して許さないという、強い社会的なメッセージとなるでしょう。学校でのいじめから逃れたはずの子どもが、匿名性に守られたネット空間でさらに攻撃されるという現状は、私たちの社会の闇を象徴していると言わざるを得ません。今回の裁判を通じて、加害者側がその行為の重大性と責任を痛感し、そして何より元生徒さんが受けた精神的な苦痛が少しでも和らぐとともに、ネット上での無責任な発言が許されないという司法の明確な意思が示されることを強く期待したいでございます。
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