2019年07月08日、世界中を揺るがしているアメリカによる中国・ファーウェイ(華為技術)への輸出規制について、国際法務に詳しい板橋加奈弁護士が非常に重要な解説を行いました。現在、多くの日本企業が「自社の製品が規制対象に含まれるのか」という瀬戸際の判断を迫られています。SNS上でも「どこまでが米国製とみなされるのか基準が不明確すぎる」といった不安の声や、「サプライチェーンへの影響が計り知れない」という驚きの反応が広がっており、事態は一刻を争う状況です。
今回の規制において鍵を握るのは、いわゆる「デミニマス・ルール」と呼ばれる規定でしょう。これは、米国外で製造された製品であっても、アメリカ由来の技術や部品が価格ベースで25%を超えて含まれている場合、米国製品とみなして輸出許可を義務付けるというものです。しかし、実際に25%という数字を算出するのは容易ではありません。物理的な部品の原価だけでなく、目に見えない「技術」や「ソフトウェア」の付加価値をどのように金額換算するかという極めて専門的な問題が立ちはだかっているのです。
技術価値の算定に潜むハードルと米商務省への照会プロセス
板橋弁護士は、特に技術価値の評価について、その算出根拠を明確にすることの難しさを指摘しています。設計データや特許ライセンスといった知的財産が製品価値の何割を占めるのか、明確な物差しは存在しません。企業が独断で「25%以下だ」と判断して輸出を強行した場合、後にアメリカ当局から巨額の制裁金を科されるリスクも否定できないでしょう。こうしたグレーゾーンの拡大が、ハイテク産業全体の足取りを重くさせているといっても過言ではありません。
万が一のトラブルを回避するため、企業側には「商務省への事前リポート提出」という戦略的な対応が求められています。具体的には、自社製品の米国比率に関する詳細なリポートを当局へ提出し、照会を行ってから30日間の待機期間を経ることで、その判断の妥当性を確認するプロセスです。この30日間という時間は、ビジネスのスピード感を考えると決して短くはありませんが、コンプライアンスを遵守しつつ国際市場で生き残るためには、避けては通れない関門になるはずです。
私自身の見解としては、今回の規制は単なる貿易摩擦の域を超え、ハイテク分野における「事実上の標準(デファクトスタンダード)」を巡る覇権争いの側面が強いと感じています。ルールが複雑化すればするほど、法務的なリソースが豊富な大企業と、そうでない中小企業の間で対応格差が生まれてしまう懸念があります。これからの時代、メーカーは単に良いものを作るだけでなく、自社の製品がどのような国際的な法的網の目にあるのかを、かつてないほど鋭敏に察知しなければならないでしょう。
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