厚生労働省は2019年08月23日、個人型確定拠出年金、愛称「iDeCo(イデコ)」の制度を大幅に見直す議論を開始しました。今回の改革の目玉は、現在60歳までとなっている加入年齢の制限を65歳まで引き上げることです。少子高齢化の影響で公的年金の先行きに不安が広がる中、働く高齢者が増え続ける現状に即して、自ら資産を築くチャンスを広げる狙いがあります。社会保障審議会の部会で議論されたこの案は、2020年の通常国会に関連法の改正案として提出される見通しです。
SNS上では「ようやく実態に追いついてきた」「60歳過ぎても積み立てられるのは心強い」といった前向きな反応が目立ちます。一方で、いわゆる「老後2000万円問題」が世間を騒がせている時期だけに、「自分で備えろということか」と身の引き締まる思いを抱くユーザーも少なくありません。政府が「人生100年時代」を掲げる中、公的年金だけに頼るのではなく、私的年金をいかに賢く活用して将来の安心を勝ち取るかという、個人のマネーリテラシーが問われる局面に来ているといえるでしょう。
働くシニアの強い味方!65歳加入で広がる複利の恩恵
現在、確定給付年金(あらかじめ将来の給付額が約束されている年金制度)では、すでに60歳を超えても加入できる仕組みが整っています。今回の改正案は、それと足並みを揃える形でイデコの門戸を広げるものです。総務省の調査によれば、60歳から64歳の就業率は2018年時点で68.8%に達しており、若年層に匹敵するほど多くのシニアが元気に働いています。こうした労働環境の変化を受け、給与所得がある間に税制優遇を受けながら積み立てを継続できるメリットは計り知れません。
イデコの最大の魅力は、掛け金が全額「所得控除」の対象になる点です。所得控除とは、税金の計算の基礎となる所得から特定の金額を差し引くことで、結果として所得税や住民税を安くできる仕組みを指します。例えば30歳から30年間、月1万円を積み立てるだけで、合計約70万円もの節税効果が見込める試算もあります。さらに運用益も非課税となるため、加入期間が5年延びることで「複利効果(運用で得た利益をさらに元本に加えて運用し、雪だるま式に資産を増やすこと)」を最大限に享受できるでしょう。
全会社員が対象に?手続きの壁を取り払う画期的な運用改正
もう一つの重要な論点は、企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している会社の従業員でも、より手軽にイデコを併用できるようにすることです。これまでは会社側の規約変更が必要だったため、実際に併用できている人はごく僅かでした。しかし、今後はそうした高いハードルを撤廃し、会社側の掛け金上限を維持したまま、個人でも自由に上乗せができる環境を整えます。これにより、今の勤務先にどのような年金制度があっても、自分自身の意思で資産形成をスタートさせることが可能になります。
私個人としては、今回の改正は非常に理にかなった一歩だと評価しています。2018年の統計で日本人の平均寿命は男女ともに過去最高水準を更新しており、長生きという「リスク」への備えはもはや義務に近いものとなりました。国の制度が柔軟になるのは歓迎すべきことですが、大切なのは私たち利用者が制度を正しく理解し、早くから行動に移すことです。法改正が実現すれば、イデコはもはや一部の人のためのものではなく、現役世代からシニアまで、全ての働く日本人が持つべき「標準装備」へと進化するはずです。
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