現在、ワシントンの政治中枢は「大統領弾劾」という歴史的な激震にさらされています。議会での政府関係者による証言によって、ドナルド・トランプ大統領がウクライナに対し、軍事支援の「見返り」として政敵であるジョー・バイデン前副大統領の調査を要求したという疑惑が、日に日にその具体性を増している状況です。この緊迫した政局の影響は、私たちの生活に直結する経済政策、とりわけ自動車関税の是非を巡る判断にも大きな影を落としています。
自動車関税の引き上げに関しては、本来であれば2019年11月14日が判断の期限とされていました。トランプ大統領は「十分に説明を受けており、早期に結論を出す」と意欲を見せていたものの、弾劾審査の騒乱の中でこの期限は宙に浮いた状態が続いています。ジョージタウン大学のジェニファー・ヒルマン教授が指摘するように、期限が切れたことで発動は見送られるとの見方が強まっており、輸入車への高関税という最悪のシナリオはひとまず回避されたと言えるでしょう。
SNS上では「結局、弾劾騒ぎで関税どころではないのか」「日本メーカーへの影響がなくて安心した」といった安堵の声が広がる一方で、トランプ政権の予測不能な動きに警戒を解かないユーザーも散見されます。しかし、ここで注目すべきはロス商務長官の前向きな姿勢です。2019年11月03日のインタビューで同氏は、日本や欧州、韓国のメーカーと良好な対話ができていることから、厳しい関税措置は必要ないかもしれないという極めて楽観的な見通しを示しました。
通商閣僚チームに見る驚異の「不変性」とトランプ流の信頼関係
トランプ政権と言えば、閣僚が次々と入れ替わる「回転ドア」のような人事の激しさが象徴的です。例えば、移民問題を所管する国土安全保障省の長官は、現時点で既に5人目に達しています。しかし、通商分野に目を向けると、ライトハイザー通商代表やロス商務長官、ムニューシン財務長官、そして強硬派のナバロ大統領補佐官といった面々は、政権発足時から一度も解任されることなく、その椅子を守り続けているのです。
この「驚くべき安定性」こそが、トランプ外交の核心を支えているのではないでしょうか。閣僚たちの間では、専門用語で「301条調査(外国の不公正な貿易慣行に対して制裁を科す強力な権限)」などを駆使した交渉術が共有されています。時にはムニューシン氏が中国とまとめた合意を大統領が覆すといった場面もありましたが、基本的には実務を担う閣僚たちの案を、大統領は最終的に支持する傾向にあることが見て取れます。
私は、この通商チームの固定化こそが、世界経済に対する過度なリスクを抑え込む「安全装置」として機能していると考えています。大統領の言動は時に気まぐれに見えますが、信頼する専門家集団の知見は確実に反映されているのです。米中対立や関税問題など不透明な要素は多いものの、実務者レベルでの継続性が保たれている限り、通商関係において過度に「トランプ・リスク」を恐れる必要はないのかもしれません。
コメント