日本の金融界が大きな転換点を迎えています。2019年11月19日現在、三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンクグループは、個人の資産をいかに取り込むかという課題に対し、「銀証連携」という強力なカードを切って攻勢をかけているのです。長引く超低金利政策の影響で、本来の稼ぎ頭である融資ビジネスが伸び悩む中、証券ビジネスのノウハウを融合させることで、富裕層向けの資産運用サービスを一段と強化しようとしています。
「銀証連携」とは、同じグループ内の銀行と証券会社が手を取り合い、顧客に対してワンストップで金融サービスを提供することを指します。かつては法律の壁によって厳格に区切られていた両者の垣根は、1990年代の規制緩和を機に崩れ始めました。その後、各グループが大手証券会社を傘下に収めることで、その協力体制は加速しています。これまで法人向けに偏っていたこの仕組みを、いよいよ個人向けサービスへと本格的に横展開し始めたのが現在の状況です。
自由が丘に現れた「金融の要塞」と加速する各社の戦略
三井住友フィナンシャルグループは、東急東横線の自由が丘駅近くに、銀行・証券・信託の機能を一つのビルに集約した拠点を構えました。ここでは顧客が移動することなく、住宅ローンの相談から高度な資産運用までを完結できます。驚くべきことに、2階のSMBC日興証券を訪れる新規顧客の約9割が銀行からの紹介だといいます。銀行では扱えない「仕組み債」や投資信託といった多様な商品を提案できることが、大きな強みとなっているのでしょう。
SNS上でもこの動きは注目を集めており、「銀行に行けば証券の専門的な話も聞けるのは便利」「いよいよ預金以外の選択肢が当たり前になってきた」といった期待の声が上がっています。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、銀行から紹介された顧客を専門に担当する「フィナンシャル・アドバイザリー部」を新設しました。2020年3月末までには400人規模へと増員する計画で、世界中の運用資産から最適な提案を行う精鋭部隊の育成に余念がありません。
一方のみずほ証券は、高齢化社会を見据えて「シニアコンサルタント」の倍増を掲げています。相続や事業承継といった専門性の高いニーズに応えることで、顧客との長期的な信頼関係を築こうとしているのです。各社がここまで必死になる背景には、足元の預かり資産の伸び悩みがあります。低金利の影響で債券投資の魅力が薄れる中、株式を含めた「攻め」の運用提案ができるかどうかが、グループ全体の総合力を試す試金石になるはずです。
私自身の見解としても、この銀証連携の深化は、単なるビジネスモデルの変更以上の意味を持つと感じています。単に商品を売るだけでなく、顧客の人生に寄り添う「コンシェルジュ」のような役割を日本のメガバンクが果たせるかどうかが問われているのではないでしょうか。従来の縦割り組織を打破し、本当の意味で顧客本位の提案ができる環境が整えば、眠っている膨大な個人マネーが動き出し、日本経済の活性化にもつながるに違いありません。
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