誰しもが願う「無病息災」という言葉がありますが、人生100年時代を生きる私たちにとって、生涯一度も病気を経験しないことは極めて珍しいケースと言えるでしょう。特に現代の日本では、男性の3人に2人、女性の2人に1人が生涯のうちに「がん」を経験するとされており、もはや「無がん」で過ごすことの方が少数派になりつつあります。
こうした状況下で注目したいのが、一つの病気を抱えることで健康への意識が高まり、結果として長生きできるという「一病息災」の考え方です。これをがん治療の最前線に当てはめると、一つのがんを経験したからこそ、次のリスクを早期に摘み取ることができる「一がん息災」という前向きな姿勢が見えてくるのではないでしょうか。
一人の患者さんが異なる臓器に複数のがんを抱える状態を「多重がん(重複がん)」と呼びます。実は、最初にがんが診断された際、同時期に別のがんが見つかる確率は2%から17%にものぼります。これは飲酒や喫煙といった生活習慣が多くの臓器に共通のリスクを与えるためで、決して珍しいことではないのです。
堀ちえみさんの事例が証明する早期発見の重要性
例えば2019年、タレントの堀ちえみさんがステージ4の口腔がんを公表されたことは記憶に新しいでしょう。彼女は舌の6割を切除する11時間もの大手術を乗り越えられました。しかし、その後の精密検査で発見された「食道がん」は幸いにもステージ1という早期段階であり、内視鏡手術による短期間の治療で済んだと報じられています。
まさにこれこそが「一がん息災」の実例です。もし口腔がんという大きな試練がなければ、自覚症状の出にくい食道がんが見逃されていたかもしれません。SNS上でも「彼女の勇気ある公表に励まされた」「検診の大切さを痛感した」といった共感の声が溢れており、病と向き合う姿勢が多くの人々に勇気を与えています。
特に「がんの王様」と称される膵臓がんは、5年生存率が1割に満たず早期発見が非常に困難なことで知られています。通常、治癒が期待できるステージ1で見つかる割合は1割程度ですが、東大病院の調査によれば、肝臓がんの治療後に行われる定期的なCT検査によって、膵臓がんの6割がステージ1で見つかるという驚きのデータも存在します。
私自身も膀胱がんを経験した一人として、この「一がん息災」という考え方を大切にしたいと考えています。がんは決して人生の終わりではなく、自分自身の体と深く対話するきっかけに他なりません。定期的な検査を継続し、早期発見のシステムを生活に組み込むことこそが、真の健康への近道であると確信しています。
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