2019年10月、日本の外食シーンはかつてないほどの逆風にさらされています。日経MJがまとめた主要35社の既存店売上高によれば、なんと22社が前年実績を割り込むという厳しい結果が浮き彫りになりました。今回の不振には、消費税率が8%から10%へと引き上げられた「消費増税」と、記録的な被害をもたらした「台風」という二つの大きな要因が重なっています。
特に深刻なのは客足の遠のき方で、データを公開している33社のうち、実に25社で客数が減少しました。SNS上でも「増税後は外食を控えて自炊を増やす」といった節約志向の声が目立っており、消費者の財布の紐が固くなっている様子が伺えます。一方で、増税に伴う価格改定などの影響で客単価は上昇傾向にあり、単価アップがわずかな救いとなっているのが現状でしょう。
ファミリーレストランと居酒屋を襲う暗雲
これまで堅調な推移を見せていたファミリーレストラン業界ですが、2019年10月は一転して苦境に立たされました。調査対象の全5社で客数が減少しており、台風による臨時休業や営業時間の短縮が大きな痛手となっています。例えば、すかいらーくホールディングスでは台風の影響で約2000店舗が営業を休止せざるを得ず、客数が11.1%も落ち込むという異例の事態に見舞われました。
さらに深刻なのは、以前から苦戦が続いていた居酒屋チェーンです。今回の増税が「追い打ち」となり、全6社が売上・客数ともにマイナスという惨擤を呈しています。仕事帰りの一杯という「嗜好品」に近い外食カテゴリーは、家計が引き締まる局面では真っ先に削減対象に選ばれやすいのでしょう。ネット上でも「居酒屋に行く回数を減らして家飲みを楽しむ」という投稿が散見されます。
逆風の中で輝くファストフードの攻勢
どんよりとした空気感が漂う外食業界において、唯一の希望となっているのがファストフード勢です。驚くべきことに、全6社すべてが増収を達成しました。この勝因は、増税タイミングに合わせた巧みなキャンペーン戦略にあります。日本ケンタッキー・フライド・チキンでは、特定の曜日に大容量のセットを割安で提供する施策が的中し、お得感を求める消費者の心をしっかりと掴みました。
吉野家も同様に、看板商品である牛丼などを10%割引で提供する積極策に打って出ています。季節の「鍋メニュー」の投入も成功し、客数と単価の両方を伸ばすという見事な立ち回りを見せてくれました。編集部としては、こうした「増税だからこそ還元する」という姿勢が、不安を抱える消費者の信頼を勝ち取ったのだと感じています。企業側の覚悟が、数字となって現れた好例ではないでしょうか。
これからの外食産業に求められるもの
内閣府が発表した2019年10月の消費者心理を示す「消費者態度指数」は36.2まで落ち込み、1年前と比較して6.7ポイントも悪化しています。この指数は、消費者が今後どれくらいお金を使いたいかという景気マインドを示す数値ですが、明らかに冷え込んでいます。特に「外食」は生活に密着しながらも節約しやすい分野であるため、今後はより厳しい競争が予想されるでしょう。
台風被害で工場が止まった幸楽苑のように、自然災害へのリスク管理も喫緊の課題であることが再認識されました。私たちが愛する外食文化を守るためには、単なる値上げではなく、価格以上の「体験価値」を提供できるかどうかが鍵になります。外食各社がこの難局をどう乗り越え、新しいスタンダードを築いていくのか、今後もその動向から目が離せそうにありません。
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