2019年12月10日、世界の経済地図を塗り替える大きな一歩がワシントンで刻まれました。トランプ米政権と野党・民主党の指導部は、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな枠組み「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」の修正案で合意に至ったと発表したのです。
これまで米議会内での与野党対立により、批准の手続きが停滞していたこの協定ですが、今回の合意によってようやく発効への明確な道筋が見えてきました。北米市場を主戦場とする日本の自動車メーカー各社にとっても、霧が晴れるようなニュースと言えるでしょう。
SNS上では「ようやく不透明感が拭えた」「トランプ政権の大きな成果だ」といった期待の声が上がる一方で、厳しい生産条件が日本の産業に与える影響を不安視する声も散見されます。経済の安定を望む多くの人々が、この歴史的な決断の行方を固唾をのんで見守っています。
民主党も認める「NAFTA超え」のクオリティ
民主党のペロシ下院議長は記者会見の場で、今回の新協定が従来のNAFTAを遥かに凌駕する優れた内容であると強調しました。交渉を主導してきた米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表も、歴史的な合意に達したとの声明を出し、政権としての自信を覗かせています。
今回の修正案には、メキシコの労働環境を厳格に監視する機関の設置が盛り込まれました。これは「労働環境」という名目で、米国から賃金の安いメキシコへ仕事が奪われる「雇用の流出」を食い止めるための強力なブレーキとして機能することが期待されています。
また、製薬会社がバイオ医薬品を独占できる期間を10年間とする条項が削除された点も注目に値します。これは薬価の過度な高騰を抑え、国民の負担を軽減しようという狙いがあり、国民生活に直結する分野での歩み寄りが見られた点は高く評価されるべきでしょう。
2020年春以降の発効へ向けたカウントダウン
ライトハイザー氏らは2019年12月10日にメキシコシティを訪れ、3カ国で改めて署名を行いました。今後は米議会での承認手続きへと進みますが、事前に与野党が合意形成を済ませているため、上下両院で可決される見通しは極めて明るい状況だと言えます。
下院での採決は来週にも行われる予定ですが、上院ではトランプ大統領の弾劾裁判との兼ね合いで2020年1月以降にずれ込む可能性も示唆されています。それでも、カナダやメキシコの議会も承認に前向きな姿勢を見せており、大きな波乱はなさそうです。
順調に手続きが進めば、すべての批准が完了した3カ月後にUSMCAは正式にスタートします。現時点での予測では、2020年の春以降に新時代の幕が開くことになるでしょう。長く続いた「北米リスク」という不確実性が、ようやく一つ解消されようとしています。
日本車メーカーが直面する試練と希望
しかし、日本の自動車産業にとってこの協定は手放しで喜べるものばかりではありません。無関税で車を輸出するためには、時給16ドル以上の工場で部品の40%を生産しなければならないといった、非常に高いハードルが設定されているからです。
こうした「生産回帰」を促すルールはコスト増を招くリスクがありますが、私はこれを「戦略の再定義」と捉えるべきだと考えます。ルールが明確になったことで、企業は迷いなく次の投資判断を下せます。不透明なまま立ち止まることこそが、最大の経営リスクだからです。
2016年の公約を果たしたトランプ氏にとっても、2020年の大統領選に向けた強固な武器となるでしょう。北米という巨大市場が新たなルールで動き出す今、日本企業がいかに柔軟に適応し、強靭なサプライチェーンを再構築できるかが今後の勝負の分かれ道です。
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