2020年1月31日までのEU離脱を目指すジョンソン首相。彼が率いる保守党の勢いが止まりません。2019年12月12日の投開票を目前に控え、各地で激しい選挙戦が繰り広げられていますが、特に注目すべきは、英国南部に位置する美しい国立公園で知られるニューフォレストです。
この地域は、2017年の前回選挙でも保守党が6割以上の得票率を叩き出した、文字通りの「保守党王国」として君臨しています。SNS上では、伝統を重んじる層と変革を望む層の間で激しい議論が交わされていますが、現地に漂う空気感は、驚くほど保守党支持の一色に染まっているようです。
「英国だけで歩んでいける」という誇りと自信
2019年12月2日に西ニューフォレスト選挙区で開催された討論会では、保守党のデズモンド・スウェイン氏が壇上に立ちました。「再度の国民投票など不要だ!」という彼の力強い宣言に、会場は地鳴りのような歓声と指笛に包まれます。対立候補へのブーイングさえもかき消すその熱狂は、まさに圧倒的でした。
スウェイン氏は、この強さの源泉を「高齢者の多さ」にあると分析しています。この地域はリタイア後の年金生活者が多く、有権者の半数近くが60歳を超えているのが特徴です。かつて英軍施設に勤務していたサイモン・ブラウンさんも、EUの前身であるEC(欧州共同体)時代以前を振り返り、「英国は単独でやってこられたはずだ」と胸を張ります。
ここで解説しておきたいのが「欧州懐疑派」という言葉です。これは、EUによる政治的な統合が進みすぎ、国家の主権が奪われることを危惧する立場を指します。彼らはサッチャー元首相の思想を色濃く受け継ぎ、当初の目的だった「経済活性化」を超えて肥大化した現在のEUに対して、強い拒否反応を示しているのです。
政治の停滞に終止符を打つ「決断」のとき
驚くべきことに、2016年の国民投票ではこの地域の4割以上が「残留」を支持していました。しかし、現在その表情は変わりつつあります。かつて残留派だった60代の元看護師の女性は、今度の選挙では保守党に投票すると決めています。彼女が望むのは、離脱問題という果てしない議論に終止符を打ち、医療や介護といった切実な国内問題に注力することです。
私は、この「消去法的な支持」こそが現代の英国を象徴していると感じます。離脱後に経済が本当に上向くのかという不安は拭えませんが、それでも「前へ進みたい」という切実な願いが、保守党への追い風となっているのでしょう。スコットランドや北アイルランドの分離リスクを冒してでも離脱を優先する姿勢には、国家のアイデンティティを取り戻したいという執念すら感じます。
地方、高齢者、自営業者。これらの強固な支持基盤に支えられ、英国は今、歴史的な分岐点に立っています。2019年12月12日、人々が投じる一票は、単なる政権選びではなく、英国という国の「形」を決定づける重い決断になるに違いありません。混迷を極めた数年間を経て、英国民がどのような未来を選択するのか、世界が固唾を呑んで見守っています。
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