英国総選挙2019:崩れ去った「赤い壁」と保守党圧勝の舞台裏!EU離脱へ突き進むジョンソン首相の勝因を徹底解説

2019年12月12日に投開票が行われたイギリス下院総選挙は、ジョンソン首相率いる保守党が歴史的な大勝を収める結果となりました。一方で、長年の牙城を崩された野党・労働党は40議席近くを失う大敗を喫しています。SNS上では、伝統的な支持層であるはずの地方都市が保守党に塗り替えられていく様子に、「時代の転換点だ」「赤い壁が崩壊した」と驚きの声が溢れました。

かつてトニー・ブレア元首相の地盤でもあったイングランド北部のセッジフィールドでさえ、今回は保守党の軍門に降りました。こうした労働党の強固な支持基盤は、党のイメージカラーから「赤い壁(Red Wall)」と呼ばれています。しかし、2016年の国民投票で離脱を支持した地方有権者たちは、今回、離脱の停滞を招いた労働党よりも「離脱を実現する」と断言した保守党を選んだのです。

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曖昧さが招いた労働党の自滅と小選挙区制の罠

労働党を率いるジェレミー・コービン党首は、2019年12月13日未明に事実上の敗北を認め、次期総選挙では陣頭指揮を執らない意向を表明しました。敗因は明白です。EU離脱か残留かという国家を二分する問題に対し、最後まで態度を鮮明にしなかったことが支持者の離反を招きました。残留派の票が自由民主党などに分散してしまったことも、大きな痛手となったのでしょう。

イギリスが採用する「小選挙区制」も、保守党に追い風となりました。これは一つの選挙区で最も多くの票を得た一人だけが当選する仕組みです。たとえ残留を望む声が多くても、複数の党に票が割れてしまえば、僅差で首位に立った保守党が議席を独占してしまいます。実際、保守党の得票率は前回比で1ポイント微増したに過ぎませんが、議席数では地滑り的な勝利を収める形となりました。

さらに、コービン氏が掲げた急進的な政策も市場の警戒を強めました。鉄道や郵便などの主要インフラを国営化し、富裕層への課税を強化するという社会主義的な姿勢は、現代の経済感覚とは乖離していたと言わざるを得ません。大手金融機関が「コービン政権誕生なら時価総額が53兆円失われる」と試算したことも、現実的な有権者の不安を煽る結果になったと推察されます。

ジョンソン首相の勝利と待ち受ける険しい交渉

対照的に、ボリス・ジョンソン首相の戦略は極めてシンプルでした。多少の乱暴な言葉遣いさえも、変化を望む有権者には「行動力のあるリーダー」として魅力的に映ったようです。「離脱を実現する(Get Brexit Done)」という明快なスローガンを繰り返し、失言を抑えて堅実な選挙戦を全うしたことが、浮動票の獲得に繋がったといえるでしょう。

この勝利により、2020年1月31日のEU離脱はほぼ確実となりました。しかし、真の苦難はここから始まります。離脱後にはEUとの間で、関税なしに貿易を行うための「自由貿易協定(FTA)」を結ぶ必要があります。通常、こうした交渉には数年を要しますが、ジョンソン政権が移行期間の延長を拒めば、わずか数ヶ月で合意を取り付けなければなりません。

世界の中でのイギリスの地位は、この3年半の混乱ですでに傷ついています。主権を取り戻すという大義名分は果たせそうですが、巨大な単一市場から抜け出す代償は決して小さくありません。ジョンソン首相がこの「分断された王国」をいかにまとめ上げ、経済的な混乱を最小限に抑えつつ新時代を切り開くのか、その手腕が厳しく問われることになるでしょう。

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