2019年12月27日、英国の街並みが大きな変革の波に飲み込まれています。「ハイストリート・クライシス」という言葉をご存知でしょうか。これは、街の顔とも言える路面店や商店街が、かつてないほどの苦境に立たされている状況を指す言葉です。長年愛されてきた老舗企業が次々と経営破綻に追い込まれており、その深刻な実態に世界中が注目しています。
英国を代表する百貨店として、1778年の創業から歴史を刻んできたデベナムズが、2019年04月に法的管理下に入ったニュースは業界に激震を走らせました。さらに同年09月には世界最古の旅行会社トーマス・クックが破産し、10月にはシニア向けアパレル大手ボン・マルシェまでもがその歴史に幕を閉じる準備を始めています。SNSでは「思い出の場所が消えていくのは寂しい」と悲しむ声が溢れています。
路面店を襲う「三重苦」の正体
こうした大型破綻の背景には、単なる景気後退ではない深刻な構造的問題が潜んでいます。まず一つ目は、スマートフォンの普及によるネット通販の台頭です。物理的な店舗を持たないオンラインストアに対し、家賃や人件費などの固定費がかさむ実店舗は、価格競争で不利な立場に立たされています。2019年11月には、小売全体に占めるネット販売の割合が18.7%にまで上昇しました。
二つ目の要因は、コストの急激な上昇です。インフレの影響で従業員への支払うべき賃金や不動産の賃料が高騰しており、利益を圧迫しています。そして三つ目が、EU(欧州連合)離脱を巡る不透明感です。離脱に伴う通貨ポンドの価値下落により、海外からの輸入品の仕入れコストが跳ね上がりました。これら「ネット通販・コスト増・離脱問題」という三重苦が、小売業の体力を奪い続けているのです。
ここで注目すべきは、英国の個人消費自体は決して冷え込んでいないという事実です。実質個人消費は15四半期連続でプラスを記録しており、働く人々の賃金も堅調に伸びています。つまり、消費者が「お金を使っていない」のではなく、「使い場所を店舗からネットへ移した」という消費行動の変化こそが、伝統的な小売業を追い詰めている真犯人だと言えるでしょう。
2020年以降の小売業が生き残る道とは
2019年12月の総選挙により、ジョンソン政権下でのEU離脱は決定的となりました。しかし、欧州との新たな通商ルールが定まらない限り、輸入コストや物流の混乱に対する不安は消えません。専門家は「消費者の手にあるスマホが小売りを支配している」と指摘しており、ただ商品を並べるだけの店舗モデルは、もはや通用しない時代に突入したことを告げています。
私個人の意見としては、これからの百貨店や路面店には「買い物以上の価値」が求められると考えています。オンラインでは決して味わえない、五感を刺激する体験やコミュニティの場としての役割を再構築できるかが鍵となるでしょう。単に便利さを追求するならネットで十分ですが、あえて足を運びたくなる「ワクワク感」を提供できる企業だけが、この荒波を乗り越えられるはずです。
伝統は守るだけでなく、時代に合わせて進化させてこそ意味があります。2020年も引き続き厳しい環境が予想されますが、これを機に英国のハイストリートがどのように生まれ変わるのか、私たちは見守り続ける必要があります。SNSでも「体験型店舗なら行ってみたい」というポジティブな意見が見られるように、変化の先には新たな希望も眠っているのかもしれません。
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