日本のインフラを支える橋の安全性が、革新的な技術によって劇的に向上しようとしています。東京大学生産技術研究所の岸利治教授たちの研究グループは、自動車の荷重を直接支える「床版(しょうばん)」と呼ばれるコンクリート製の板を、大幅に軽量化かつ高強度化する新技術を開発しました。ネット上でも「日本のインフラを守る救世主だ」「これなら工事の渋滞も減るかもしれない」と、大きな期待を寄せる声が数多く上がっています。
そもそも床版とは、橋の道路部分の真下に敷かれ、車の重さを橋桁や橋脚に伝える極めて重要な構造部材です。しかし、長年にわたり多くの車が行き交うことで床版は徐々にたわみ、左右に引っ張られる力が加わります。実はコンクリートには、この引っ張られる力に対して非常に脆いという弱点があるのです。そのため、微細なひび割れから水分などが侵入し、構造全体の劣化を招くことが国内の多くの橋で深刻な課題となっています。
これまでは耐久性を高めるために床版を厚くするのが一般的でしたが、それでは橋全体が重くなり、大地震の際に橋脚が耐えきれなくなる危険性がありました。かといって橋脚自体を太く補強しようとすれば、莫大な材料費や工事コストが発生してしまいます。このジレンマを解消するために注目されたのが、水と反応して体積が膨らむ「膨張材(ぼうちょうざい)」という石灰などを主成分とした特殊な材料です。
コンクリートに膨張材を混ぜると、内側の鉄筋を押し広げるように膨らみます。すると今度は鉄筋が元に戻ろうとする反作用が働き、コンクリートを内側へギュッと凝縮させる「圧縮力」が生まれるのです。このあらかじめ仕込まれた力のおかげで、車が通ったときの引っ張り力に耐える強度が劇的に向上します。従来はこの膨張材が高価だったため、床版へ大量に投入されることはほとんどありませんでした。
そこで岸教授は、膨張材の量を従来の1.5倍に増やす大胆なアプローチを試みました。さらに、これまで水平方向だけだった鉄筋の配置を工夫し、上下方向にも組み込む立体的な内部構造を考案したのです。これにより上下への余計な膨張を抑え込むことに成功し、床版の厚みを従来の25センチメートルから22センチメートルへと薄型化させ、全体の重量を15%も軽量化させました。
実際の車両走行を再現した過酷な耐久実験でも、従来の床版を遥かに凌ぐ長寿命化が実証されています。2020年01月09日の発表時点で、今後は全国の橋が一斉に更新時期を迎えるため、大規模工事による工費の膨張が強く懸念されている状況です。しかし、この軽量な新型床版に交換すれば、橋の上部だけを軽くできるため、土台となる橋脚の大規模な耐震補強をせずとも安全性を高められます。
この画期的な新技術は、すでに神奈川県横浜市の首都高速道路において試験的な施工が行われています。現時点では上下に鉄筋を配置する工法が複雑なため、品質が安定する工場であらかじめ製造してから現場へ搬入する手法をとっていますが、将来的には工事現場での直接施工を目指しているとのことです。限られた財源の中でインフラを守るため、このようなスマートな技術革新こそが今まさに求められています。
高度経済成長期に造られた膨大な橋を維持管理していくことは、これからの日本にとって避けては通れない最大の課題の一つと言えるでしょう。単に壊れたものを新しくするのではなく、最新の科学の力でより強く、より経済的に生まれ変わらせる試みは非常に有意義です。今回の軽量床版が実用化されれば、工事期間の短縮やコスト削減につながり、私たちの安全で快適な暮らしを長く支えてくれるに違いありません。
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