私たちが暮らす木造住宅の未来を左右する、気になるニュースが飛び込んできました。住宅の骨組みとなる柱や梁(はり)に欠かせない「集成材」。その重要な原料となる板材「ラミナ」の日本向け価格が、なんと4四半期ぶりに値上がりへと転じたのです。ラミナとは、乾燥させた木材を何層にも張り合わせて強度を高めた集成材を作るための、いわばベースとなる重要な木板のこと。マイホームの建築を検討している方にとっては、今後の建築コストへの影響が非常に気になるところでしょう。
主軸となっている欧州産の2020年1月から3月までの積荷価格は、梁向けで1立方メートルあたり235ユーロ前後を記録しました。これは直前の期である2019年10月から12月までの期間と比べて、5ユーロ(約2パーセント)の引き上げとなります。SNS上でも「これって家を建てる費用が高くなるの?」「北欧の情勢が日本の住宅に関係してくるなんて驚きだ」といった、将来の住宅価格への不安や驚きの声が数多く上がっており、関心の高さがうかがえます。
値上がりの舞台裏!欧州のストライキと新たな環境規制の波
今回の値上がりの背景には、遠く離れた北欧フィンランドでの政情が深く絡んでいます。実は2019年12月中旬、現地の大手製材会社でストライキが突発的に発生しました。ストライキとは労働者が一斉に仕事を休んで抗議する行為であり、これにより工場が一時的にストップしたため、日本への安定した供給に対する危機感が一気に高まったのです。さらに、世界的な新しい環境ルールがスタートしたことも、価格を押し上げる強力な要因となりました。
その規制とは、国際海事機関(IMO)が2020年初頭から導入した船舶燃料の環境規制強化です。地球温暖化や大気汚染を防ぐ目的で、船の燃料に含まれる硫黄分の濃度を厳しく制限するルールが始まりました。この規制をクリアするために、より高品質で高価な燃料を使う必要が生じ、結果として海を渡るための輸送費(運賃)が上昇してしまったのです。世界規模の環境対策が、私たちの住まいづくりに直結しているという事実は、非常に興味深い動きだと言えます。
住宅市場の冷え込みと今後の流通価格が持つ不透明な先行き
日本側もただ黙って値上げを受け入れたわけではありません。例年1月から3月までの期間は冬枯れで住宅建設の需要そのものが少ない時期にあたります。さらに、2019年10月に実施された消費税増税の反動により、新しく建てられる住宅の数(住宅着工戸数)が落ち込むという予測もあり、価格の据え置きを必死に交渉しました。しかし、欧州側の供給不安の勢いには抗えず、最終的にはこの値上げ要請を受け入れる形となったのが実情です。
ただ、専門家の視点で見ると、まだ過度に恐れる必要はないのかもしれません。業界大手の銘建工業(岡山県真庭市)によれば、「わずかに値上がりしたものの、過去10年間のスパンで見れば依然としてかなりの安値圏にある」とのこと。実際に2020年1月から3月までの積荷価格は、前年の同じ時期と比べると13パーセントも低い水準です。これは米中貿易摩擦によって中国の木材需要が減少し、2019年4月以降から日本向け価格が下がり続けていたためです。
こうした原料の動きに連動して、国内で出回る集成材の流通価格も下落していましたが、2019年11月からは横ばいの状態が保たれています。東京地区における問屋卸価格は、現在1立方メートルあたり5万8000円から5万9000円ほどで推移している状況です。専門商社からは「今後の住宅市場に対する先行き不安もあり、ここから流通価格が再び上昇へと向かうかは極めて不透明だ」という声も聞かれ、しばらくはハラハラする展開が続くでしょう。
編集部としては、今回の値上がりは一時的な局地ショックに過ぎず、すぐに住宅全体の価格高騰へ直結する可能性は低いと見ています。ですが、環境規制による輸送コストの増加は今後も慢性的な負担となるはずです。日本の住宅産業は、海外の予期せぬトラブルや地球規模のルール変更に対して、いかに柔軟なサプライチェーン(供給網)を築けるかという、新たな試練に直面しているのではないでしょうか。今後の動向を注意深く見守りたいところです。
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