男子ゴルフの「SMBCシンガポールオープン」は2020年1月19日、熱戦の最終日を迎えました。注目を一身に集めたのは、2位に4打差をつけて首位を快走していたマット・クーチャー選手です。穏やかな海風が急変する不穏な空気の中、7番ホールで予期せぬ大トラブルが発生します。ティーショットを左の林に打ち込むと、脱出に手間取り、さらには打球が紛失球となる悪夢に見舞われました。結果は痛恨のトリプルボギーとなり、一瞬にしてリードを失う劇的な展開に場内は騒然となります。
トリプルボギーとは、各ホールに設定された規定打数(パー)より3打多くかかってしまう大叩きを意味します。普通の選手なら精神的な大ダメージを受ける場面ですが、41歳のベテランは動じません。SNS上でも「クーチャーのメンタルが強すぎる」「あの状況から崩れないのは流石」と、彼の驚異的なポーカーフェイスと冷静沈着なプレースタイルに称賛の声が相次いでいます。焦りでスイングを乱すことなく、自分の世界を保ち続ける姿は、まさに一流のプロフェッショナルと言えるでしょう。
この窮地を救ったのは、2020年1月18日の3日目にマークした圧倒的な貯金でした。ボギーなしの9バーディーという驚異的なゴルフで、コースレコードの「62」を叩き出していたのです。193センチの恵まれた体躯から繰り出されるスイングは、ゆったりとしていて優雅そのものに見えます。しかし、その奥には驚くべき身体能力が秘められています。実は大会2日目のイベントで卓球の五輪出場経験選手と対戦した際、見事に1ゲームを奪うほどの俊敏性を披露していました。
無類の強さを誇るパー5と今後の期待
クーチャー選手の強さは、長い手足を巧みに使った正確無比なショットにあります。まるでボールを下手投げで狙った場所へ丁寧に転がすかのような安定感は芸術的です。今回の勝因は、全4日間のパー5(規定打数が5打の長距離ホール)での圧倒的なスコアにありました。7番でのミスを除けば、パー5だけで10個のバーディーと1個のイーグル(規定打数より2打少なくカップインすること)を量産し、前年の大会レコードに並ぶ通算18アンダーでの圧勝劇を演じたのです。
年明けからハワイでの米ツアー2連戦を消化し、シンガポールへと転戦してきたクーチャー選手にとって、これが2020年の嬉しい初勝利となりました。日本とアジアの共同主管ツアーでの初タイトルに、本人も「来年もぜひ出場したい」と満面の笑みで喜びを語っています。逆境でも笑顔を絶やさない彼のゴルフは、アマチュアゴルファーにとっても、メンタル維持の最高のお手本になるのではないでしょうか。今後の日本ツアーでのさらなる活躍からも目が離せません。
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