新型コロナ肺炎が中部経済を直撃!自動車・観光産業への深刻な影響とマスク特需の裏側

2020年1月28日、中国を中心に猛威を振るう新型コロナウイルスの影響が、日本の製造業を支える中部地方の企業へ急速に広がっています。従業員の安全を最優先に確保するため、多くの企業が現地への出張を一斉に禁止しました。さらに、現地に滞在している出向者らを緊急帰国させる動きも本格化しています。

今回の危機において、特に大きな影を落としているのが自動車産業の集積地である湖北省武漢市です。世界的な自動車メーカーであるトヨタ自動車は、この地域への出張を全面的に差し止めました。これに加えて、中国全土への不要不急の移動についても、見合わせるよう社内に強く促している状況です。

政府が手配したチャーター機を用いて、現地から社員を退避させる準備を進める企業も後を絶ちません。自動車部品大手であるデンソーは、現地との合弁会社で働く日本人スタッフに対し、春節の休暇期間中は自宅から外出しないよう指示を出しました。各社は情報収集と安全確保に追われています。

湖北省に生産拠点を置く中央発条でも、武漢市内に1人の駐在員が残されており、現地緊迫化への懸念が高まります。工作機械の大手であるオークマやヤマザキマザック、さらにブラザー工業といった名だたる企業も、中国への渡航制限や武漢への立ち入り禁止措置を相次いで打ち出しました。

ネット上では「サプライチェーンの寸断が心配」「現地にいる出張者の無事を祈る」といった、経済活動の停滞や人命を案じる切実な声が数多く飛び交っています。事態が長期化すれば、中部企業の業績を大きく下押しすることは避けられない見通しであり、市場には強い警戒感が漂い始めました。

主要企業136社の2020年3月期における純利益は、前期比で0.7%減少する予測が出ています。とりわけ製造業に関しては10.8%減と、厳しい落ち込みが懸念されていた状況でした。2021年3月期に向け、中国経済の回復に伴う業績アップが期待されていた矢先の直撃となっています。

この不測の事態は、海外展開を行う大企業だけでなく、国内の観光地や内需を支える企業にも深刻な影を落とし始めました。岐阜県の高山や三重県の伊勢志摩といった屈指の景勝地を抱える中部地方では、訪日外国人による消費である「インバウンド需要」の急激な冷え込みが不安視されています。

2003年に世界を震撼させたSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行時と比較すると、現代の地域経済におけるインバウンドへの依存度は圧倒的に高まりました。実際に名古屋市内のシティーホテルでは、2020年2月上旬に予定されていた団体客の予約がキャンセルされる事態が起きています。

こうした苦境が伝わると、SNS上では「宿泊業や観光地への打撃が深刻すぎる」「SARSの時より観光客が多いから影響が読めない」という悲痛な声が目立ちました。一方で、高級ホテルでは個人客の利用がメインであるため、現時点では目立ったキャンセルは確認されていない模様です。

このように経済全体が大きな打撃を受ける中、皮肉にも感染予防に不可欠な衛生用品を扱う業界では、異例の特需が湧き起こっています。名古屋市のマスク製造会社である白鳩では、取引先からの注文数が通常の5倍にまで膨れ上がり、自社倉庫の在庫が完全に底をつく状態となりました。

同社では2つある工場の稼働時間を急ピッチで延長し、勤務体制を強化することで増産体制を整える検討を始めています。また、医療機関向けに物資を供給するエフスリィーでも、受注が通常の3倍から4倍に急増しており、電話対応や出荷作業に追われる日々が続いている様子です。

筆者は、今回の事態が中部経済の構造的な脆さを浮き彫りにしたと感じています。グローバル化が進んだ現代だからこそ、一過性の流行病と甘く見ず、サプライチェーンの分散やインバウンド一本に頼らない多角的な地域活性化策を、今すぐ真剣に模索すべきタイミングなのではないでしょうか。

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