造船大国ピンチ?日本の船舶受注残が20年ぶり歴史的低水準へ!SOx規制や新型肺炎の影響を徹底解説

日本の基幹産業の一つである造船業に、今、大きな激震が走っています。日本船舶輸出組合が2020年2月13日に発表したデータによると、2020年1月末時点における輸出船の手持ち工事量、いわゆる「受注残」が1847万総トンまで落ち込みました。これは前年の同じ時期と比べて実に28%もの減少となります。隻数で見ても、2019年1月末の501隻から405隻へと大幅に減少しており、1900万総トンの大台を割り込むのは2000年以来で、約20年ぶりの異例の低水準と言わざるを得ません。

この「受注残」とは、造船会社が注文を受けながらも、まだ引き渡していない未完成の船の工事量を指す専門用語です。いわば造船所の将来の仕事量を表すバロメーターであり、この数値の落ち込みは業界の深刻な先行きを物語っています。実は、2019年11月から2000万総トン割れが続いており、2019年12月も1979万総トンと苦戦を強いられていました。歴史的な低水準に沈む現状に、SNS上でも「日本のものづくりが心配」「造船の街の活気がなくならないか不安だ」といった懸念の声が広がっています。

一方で、2020年1月単体の輸出船契約実績(受注量)自体は、前年同月比10%増の75万総トン(18隻)を記録しました。内訳は、梱包しないまま大量の貨物を運ぶ「ばら積み船」が17隻、液体を運ぶ「タンカー」が1隻です。4ヶ月ぶりに前年実績を上回ったものの、2019年12月の92万総トンからは急減しており、手放しでは喜べません。2019年4月から2020年1月までの累計で見ても、前年同期比17%減の712万総トンにとどまり、低調なトレンドから抜け出せていないのが現状です。

ここまで低迷した背景には、過去の激しい国際競争があります。1800万総トン台への突入は、ウォン安を背景に韓国の造船勢が圧倒的な低価格を武器に大量受注を仕掛けてきた、2000年7月以来の事態なのです。さらに期待外れに終わったのが、2020年1月から始まった「SOx(硫黄酸化物)規制」の強化でした。これは船舶の燃料から発生する有害物質を抑え、地球環境を守るための世界的な環境規制です。業界ではこれを機に、環境に優しい新造船への買い替え需要が爆発すると予測されていました。

しかし、世の中はそう甘くはありませんでした。船主たちは高価な新造船を買うのではなく、既存の船に低硫黄燃料を使用したり、排ガス洗浄装置である「スクラバー」を後付けしたりする代替策を選んだのです。結果として新造船の受注には結びつかず、目算が外れる形となりました。筆者の視点としても、環境対応への投資を渋らざるを得ないほど、世界の海運市況自体が冷え込んでいる現れだと感じます。目先のコストを優先せざるを得ない船主の苦悩が透けて見えるようです。

さらに、追い打ちをかけるように新たな影が忍び寄っています。現在世界を震撼させている新型肺炎(コロナウイルス)の感染拡大です。現時点ではこの影響が受注残の数字に直接織り込まれてはいませんが、水面下での打撃は必至でしょう。現に、2020年3月にシンガポールで開催予定だった国際的な展示会「アジア・パシフィック・マリタイム」が、半年の延期を余儀なくされ、2020年9月への開催変更が決定しました。世界中のビジネスチャンスが停滞し始めています。

こうした国際イベントの延期や渡航制限は、造船各社の地道な営業活動に急ブレーキをかけかねません。ただでさえ底這いを続ける受注環境において、この移動制限は致命的な打撃となる恐れを孕んでいます。日本の造船業が誇る高い技術力や省エネ性能が、世界にアピールできないのは痛手です。今後の動向を注意深く見守る必要がありますが、政府による資金繰り支援や、次世代のクリーン船舶開発への大胆な投資など、官民一体となったスピーディーな攻めの対策が今こそ求められているでしょう。

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