長野県諏訪市に拠点を置くアスリートFAが、主力製品である半導体製造装置の生産能力を大幅に引き上げると発表いたしました。次世代通信規格「5G」の本格的な商用化を見据え、需要の急増に対応するため、本社工場におよそ2億円を投じ、生産体制を強化する計画です。具体的には、工場の改修によって組み立てスペースを1.5倍に拡大するとのこと。この積極的な投資は、同社の成長戦略における重要な一手となるでしょう。
この増産計画の中心となるのが、同社の世界シェアで8割を占めるという半導体製造装置「マイクロボールマウンタ」です。この装置は、ICチップの材料となるウエハーに、直径数十マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートルという極めて微細な単位)という、非常に小さいはんだボールを取り付ける重要な役割を担っています。スマートフォンなどの電子機器の高性能化には欠かせない技術であり、その精密さには目を見張るものがあります。アスリートFAは、この組み立て工程に、はんだボールが適切に取り付けられているかを検査する工程も組み込むことで、品質保証体制も強化する方針です。
本社工場の改修は、2019年5月から順次進められており、年内の完了を目指しています。今回の改修では、設計や品質保証といった事務作業を行う部署を2階に集約し、業務の効率化を図るとともに、1階に空いたスペースを組み立てラインに充てることで、組み立てスペースを現在の1.5倍となる600平方メートルまで広げます。これまで、2018年夏ごろの受注集中時には、組み立てスペースが不足し、やむを得ず廊下で作業を行うこともあったという背景があり、今回の増強は、より計画的かつ効率的な生産を実現するための待望の施策といえるでしょう。
5G市場本格化を見据えた戦略的増産
今回の生産能力の5割引き上げは、2020年に商用化される「5G」基地局や、それに対応するスマートフォンなどに関連する「マイクロボールマウンタ」の受注増を見据えた戦略的な動きです。現在、一時的に受注は落ち着いているものの、業界全体の動向を見ると、今後の需要拡大は確実視されています。世界半導体市場統計(WSTS)の予測によると、米中貿易摩擦やスマートフォン需要の頭打ちにより、2019年の半導体市場は前年比で12パーセント減の4,120億ドル(約44兆円)と見込まれています。しかし、続く2020年には、5G関連サービスの開始や自動車の電動化を背景に、5.4パーセント増の4,343億ドル(約46兆円)への回復が見込まれており、この市場回復をリードするのが5G関連の需要であることは明白です。
1988年設立のアスリートFAは、従業員約80人という規模ながら、この分野で世界的な存在感を放っており、2019年3月期の売上高は約20億円を計上しています。今回のような思い切った設備投資は、足元の市場の波に左右されることなく、将来の大きな成長を見据えた、極めて先見性のある経営判断だと評価できます。インターネット上でも、「世界シェア8割の企業が動くのは心強い」「日本の高い技術力が世界を支える証拠」といった声が散見され、同社の動向に対する関心の高さが伺えます。当メディアとしても、この大胆な増産投資が、日本の製造業、そして世界のテクノロジーの進展にどのように貢献していくのか、今後も注目していきたいと考えます。
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