今、化学の世界で大きな注目を集めている素材があります。それは、ダイヤモンドに匹敵するほどの強度や卓越した熱伝導性を誇る、カーボンナノチューブ(CNT)です。この革新的な素材の商用化の波が、世界中でいよいよ本格的に押し寄せている現状は、まさに産業革命の予感を感じさせます。
特に日本国内では、日本ゼオンが電気炉を用いた独自の量産技術を確立し、すでにサンプル出荷を開始しています。また、海外に目を向けると、韓国LG化学も大規模な量産工場を稼働させるなど、この新素材を巡る開発競争は激化の一途を辿っています。水素ステーションや燃料電池のシール材といった多岐にわたる部材への応用を通じて、その本格的な実用化が目前に迫っているのです。この夢の素材がもたらす未来に、私たちは大きな期待を抱かずにはいられません。
カーボンナノチューブは、その名の通り炭素元素だけで構成された、極めて細い筒(チューブ)状の物質で、直径はわずか数ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)という、超微細な構造をしています。このCNTには、筒が何層にも重なった多層型と、日本ゼオンなどが得意とする、筒が一層のみの単層型があります。特に製造が難しいとされる単層型は、その軽量性にもかかわらず、ダイヤモンド並みの高い強度や優れた導電性という、驚異的な特性を持っています。
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炭素繊維の革新的な活用:耐久性と熱伝導性を両立
日本ゼオンでは、この単層CNTを同社の主力製品であるゴムなどに混ぜ合わせることで、材料の性能を飛躍的に向上させています。例えば、わずか重量比1%程度の単層CNTをゴムに配合するだけで、長さ数百マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)のCNTがゴムの内部で「わたあめ」のように複雑に絡み合い、柔らかさと耐久性、そして熱伝導性を高い次元で両立した、これまでにない新しい素材が生まれるというから驚きです。
この革新的な新素材は、すでに水素ステーション向けのシール材として応用されています。単層CNTを配合したゴム製のシール材は耐熱性に優れ、従来のゴムでは耐えられなかったセ氏230度という高温下でも長時間にわたりその性能を維持できます。さらに、従来のゴム部材が高圧下の水素によって内部に気泡や亀裂が生じ、破壊されてしまうという課題に対しても、単層CNTの配合が有効な解決策となります。
単層CNTを配合することで、水素がゴムとの隙間を伝うようにゆっくりとシール材の外へ抜け出し、部材の破壊を防ぐことができると考えられています。同社は、数年後にはこの素材を水素ステーションに不可欠な基幹材料へと育成したいという展望を抱いており、このシール材は、家庭用燃料電池など、非常に潜在的なニーズの高い分野への応用も期待されています。まさに、私たちの生活の基盤を支える技術革新に繋がるでしょう。
世界で加速する実用化の波とSNSの反響
カーボンナノチューブの実用化の波は、日本だけでなく世界中を席巻しています。世界大手の昭和電工や韓国LG化学がすでに大規模工場を稼働させている事実は、その期待度の高さを物語っています。また、中国の広東省深圳市に拠点を置くスタートアップ、深圳湾科技(シーワン・テクノロジー)も、2016年(平成28年)の操業以来、自動車や航空機向けの部材へのサンプル出荷を進めています。この素材の耐久性は、車体の軽量化に大きく貢献すると見られており、自動車産業の未来を左右する可能性を秘めています。
さらに、名城大学発スタートアップである名城ナノカーボンは、産業技術総合研究所などと共同で、単層CNTを用いたインクを製造する技術を開発しました。これは、電子ペーパーをはじめとする次世代の電子デバイスへの応用を目指すもので、技術革新のフロンティアを切り拓いています。2019年(令和元年)5月31日時点でのSNSでの反響を見ると、「日本の技術が未来を変える!」「軽くて強い新素材にワクワクする」といった、期待と驚きの声が多く見受けられます。特に水素社会の実現に向けた応用への関心が高く、環境技術としての側面も注目されています。
矢野経済研究所が発表した調査結果によると、カーボンナノチューブの世界出荷量は、2023年(令和5年)には2017年(平成29年)の実績のおよそ2倍にあたる約3931トンに達する見込みだといいます。この需要拡大は、主にリチウムイオン電池の正極材への添加剤としての用途が牽引すると予測されています。私の意見ですが、このCNTという「夢の炭素繊維」は、単なる既存材料の置き換えに留まらず、私たちの社会が抱えるエネルギー問題や環境問題に対するゲームチェンジャーとなり得る、極めて重要な素材だと確信しています。今後、この技術革新がどのような未来図を描き出すのか、引き続き注目していくべきでしょう。
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