【ハンセン病家族訴訟】歴史的な控訴断念で拓かれた救済の道。差別と偏見の解決へ、国が負うべき重い責任

2019年07月09日、長きにわたり社会の片隅で差別と偏見に耐え忍んできたハンセン病元患者の家族たちに、ついに希望の光が差し込みました。安倍晋三首相は、国に対して損害賠償を命じた同年06月28日の熊本地裁判決を受け入れ、控訴を断念する意向を正式に表明したのです。この決断は、かつての誤った国策によって傷つけられた人々の尊厳を取り戻すための、大きな第一歩となるでしょう。

東京都内で開催された記者会見では、原告団から「偏見を根絶するために国は全力を尽くしてほしい」という切実な願いが語られました。SNS上でもこのニュースは瞬く間に拡散され、「あまりにも長い時間がかかったけれど、ようやく一歩前進した」「家族というだけで差別される理不尽さが終わってほしい」といった、原告の苦悩に寄り添う温かい声や、国の責任を問う鋭い意見が数多く寄せられています。

原告団長を務める94歳の林力さんは、衆院議員会館での会見にて、約80年前に父親が鹿児島県の療養所へ強制収容されてからの壮絶な半生を振り返りました。ハンセン病とは、かつて「らい病」と呼ばれた細菌感染症ですが、感染力は非常に弱く、現代では治療法も確立されています。しかし、かつての日本では患者を社会から完全に引き離す「強制隔離政策」がとられ、それが深刻な差別を生む土壌となりました。

林さんは、父が連れ去られた後に自宅が真っ白な薬剤で消毒される光景を目の当たりにし、幼心に恐怖を刻み込まれたそうです。療養所の父からは「家族だと知られたら幸せにはなれない、一生隠し通せ」という悲痛な手紙が届き続けました。林さんは震える声で、「もう隠す必要はないんだよ、と父の霊前に報告したい」と述べ、名前を伏せて生きてこざるを得なかった歳月の重みを噛み締めていました。

会見場には、顔や名前を公表できないという条件で参加した原告も多く、その事実こそが今なお根深く残る差別の象徴といえます。読み書きの機会を奪われ、青春を失ったと訴える方や、幼い妹が母親と引き離されて泣き叫んでいた光景が忘れられないと語る方など、その被害は多岐にわたります。国が認めるべきは金銭的な補償だけでなく、奪われた「あるべき人生」そのものに対する心からの謝罪ではないでしょうか。

弁護団は、今回の判決確定を機に、原告以外の家族も含めた広範な救済制度の創設を求めています。これまでの隔離政策は、単に患者本人を苦しめただけでなく、その血縁者にまで「汚れ」のレッテルを貼るという残酷な構造を持っていました。失われた家族の絆を修復し、すべての被害者が救われるためには、一過性の対応ではなく、未来を見据えた息の長い支援策の構築が不可欠であると私は強く感じます。

今回の国の決断は、現在も最高裁で争われている他の同種訴訟にもポジティブな影響を与える可能性が高いでしょう。司法と行政が手を取り合い、一刻も早くすべての家族に救いの手を差し伸べるべきです。過去の過ちを真摯に検証し、二度と同じ悲劇を繰り返さないための立法措置を講じること。それこそが、2019年というこの転換点において、国が果たすべき真の役割ではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました