2019年07月10日、世界の金融市場が固唾を呑んで見守る中、FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長が重要な証言を行いました。米下院での公聴会にて、議長は7月末の利下げを強く示唆する発言を繰り出したのです。このニュースを受けてニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は一時200ドル近くまで急騰し、投資家の熱気は最高潮に達したかに見えました。しかし、終わってみれば上昇幅を縮小させるという、どこか「重たさ」を感じさせる展開となったのです。
SNS上では「利下げ確実で株価爆上げかと思ったのに意外と伸びない」「市場はもう織り込み済みなのか」といった、戸惑いの声が多く聞かれました。パウエル議長は、米中貿易摩擦が依然としてアメリカ経済の重荷になっていることを認め、多くの政策委員が「緩和的な金融政策」の必要性を感じていると踏み込んだ発言をしています。これまで慎重だった姿勢を一転させ、市場が期待していた「7月の利下げ」を事実上追認した格好となりました。
ここで専門用語を少し紐解いてみましょう。「金融緩和」とは、中央銀行が金利を下げたり市場にお金を供給したりすることで、経済を活性化させる手法を指します。通常、金利が下がれば企業はお金を借りやすくなり、株価にはプラスに働きます。2019年07月10日も、金利の動きに敏感な2年物国債の利回りが1.82%まで大きく低下しました。しかし、それだけ強力な追い風が吹いているはずなのに、ダウ平均の終値は前日比76ドル高の2万6860ドルに留まったのです。
史上最高値の裏で進行する「マネーの変調」と投資家の本音
この不可解な現象の裏には、長期的な運用を行う投資家たちの「静かな離脱」が隠されています。2019年06月、ダウ平均は7%を超える大幅な上昇を記録しましたが、実はこの裏で世界の株式ファンドからは約80億ドルもの資金が流出していました。さらに2019年07月09日までの集計では、流出額が133億ドル(約1兆4400億円)へと加速しています。つまり、株価が上がっている間に、賢明な投資家たちは利益を確定させ、安全な「債券」へと資金を移しているのです。
株式市場における「PER(株価収益率)」という指標をご存知でしょうか。これは株価が「1株あたりの利益」の何倍まで買われているかを示すもので、現在の17倍という数値は、ここ1年で最も割高な水準に達しています。企業の利益成長が見込みにくい中で株価だけが先行して上がっている状態であり、冷静な投資家たちが「今の株価は実力以上に高いのではないか」と警戒を強めるのは、至極当然の判断だと言えるでしょう。
私自身の見解を述べさせていただくなら、現在の市場はまさに「砂上の楼閣」のような危うさを孕んでいると感じます。株価を支えているのは、将来の利下げを期待して短期的な利益を狙う投機筋の買いが中心であり、年金基金や個人のような「腰の据わった資金」が逃げ出している現状は無視できません。いくらパウエル議長が低金利という処方箋を出しても、経済の基礎体力そのものが米中摩擦で削られている以上、株価が持続的に右肩上がりを続けるのは難しいのではないでしょうか。
市場ではすでに年内3回の利下げを予見する動きすらありますが、それは裏を返せば、それほどまでに景気が冷え込むリスクがあるという警告でもあります。利下げ観測という「お薬」で株価を吊り上げる手法は、もはや限界に近づいているのかもしれません。2019年07月10日の上値の重さは、投資家たちが「これ以上の深追いは危険だ」と直感的に察知した証拠ではないでしょうか。今後のマーケット動向からは、一時も目が離せそうにありません。
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