マレーシアの政治情勢が、かつてないほどの激震に見舞われています。クアラルンプールからの報告によれば、2019年07月18日までに、アズミン・アリ経済相を標的とした同性愛疑惑の映像拡散に関与した疑いで、アンワル元副首相の政治担当秘書が逮捕されました。この事件は単なるスキャンダルの枠を超え、マハティール首相の後継者の座を巡る熾烈な権力闘争の様相を呈しています。
事の発端は2019年06月、アズミン氏に酷似した人物が同性愛行為に及ぶ動画がSNS上で次々と拡散されたことでした。イスラム教を国教とするマレーシアにおいて、同性愛は法的に禁じられているだけでなく、倫理的にも極めて厳しい視線が注がれます。SNS上では「卑劣な政治工作だ」という擁護論がある一方で、「真実なら即座に退陣すべきだ」という厳しい声が渦巻いており、国民の関心は最高潮に達しているようです。
今回の逮捕劇により、アンワル氏とアズミン氏という二人の最有力候補による「泥仕合」が決定的となりました。アンワル氏は2019年07月17日の記者会見で、自身の関与を強く否定した上で、アズミン氏に対して「有罪なら辞任すべき」と迫りました。これに対し、かつて同罪で服役経験のあるアンワル氏に対し、アズミン氏は「鏡を見るべきだ」と猛反論。かつての師弟関係は完全に崩壊し、互いに背中を刺し合う異様な光景が広がっています。
混迷を極める後継者選びとマレーシア経済への影
マハティール首相は、2018年05月の政権交代以降、アンワル氏への禅譲を約束してきました。しかし、かつてアンワル氏を解任した経緯があるため、政界ではその真意を疑う声が絶えません。一方で、経済相として頭角を現したアズミン氏は首相の信頼も厚く、今回のスキャンダルは彼の政治生命を絶とうとする「悪辣な陰謀」であると主張しています。首謀者の特定を急ぐ警察の捜査結果が、国の運命を左右すると言っても過言ではありません。
こうした混乱の中、第3の候補としてマハティール首相の実子、ムクリズ氏が「大きな役割を担う準備がある」と意欲を示し、世襲への含みを持たせています。しかし、私が思うに、腐敗した前政権を打倒して「清廉な政治」を掲げた現政権が、身内への権力継承や不透明な醜聞に明け暮れる姿は、国民の期待を裏切る行為ではないでしょうか。米中貿易摩擦の影響で景気後退が懸念される今、政治家が注力すべきは内紛ではなく、経済の立て直しであるはずです。
専門家の間では、今回の騒動によって与党連合のクリーンなイメージが大きく損なわれたとの批判が強まっています。政策議論が置き去りにされ、個人攻撃が優先される現状では、マレーシアの国際的な信頼性にも傷がつきかねません。2019年07月現在のこの混沌とした状況が、民主主義の成熟への陣痛となるのか、あるいは政権崩壊の引き金となるのか。我々は冷静にその行方を見守る必要があります。
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