2019年6月1日より、ふるさと納税に関する新制度がスタートいたしました。これまで問題視されてきた、一部自治体による過度な返礼品競争を是正するため、返礼品の基準が厳格化されたのです。具体的には、返礼品を寄付額の3割以下に抑え、さらに地場産品(その地域で生産・加工されたもの)に限定することが義務付けられました。この大きな変化を受け、大手広告グループの博報堂DYホールディングス(HD)は、新たな需要を掘り起こす革新的なサービスを開始されるとのことで、大変注目を集めています。
その核となるのが、社内ベンチャーであるROOTs(ルーツ)が2019年8月に開設を予定している体験型返礼品専門の仲介サイト「さと いこ」です。このサイトは、地域の観光資源を活かした旅行プランや体験ツアーをふるさと納税の返礼品として提供するもので、単に特産品をもらうだけでなく、その土地を実際に訪れる**「コト消費」を前面に押し出しているのが大きな特徴です。果物狩りができる観光農園の体験や、趣のある古民家に宿泊するプランなど、「モノ」ではなく「体験」を求めている寄付者にとって、魅力的な選択肢となるでしょう。
「さと いこ」は、サイトの利用者が人数や希望する体験のジャンル、予算などを絞り込んで返礼品を探すことができ、まるで一般的な旅行サイトでツアーを選ぶような感覚で簡単に寄付が行えるように開発されているそうです。パソコンやスマートフォンからアクセス可能で、自治体や体験提供事業者を紹介する記事の配信、さらには寄付者がプランへの評価や感想を書き込める機能も搭載される計画となっています。掲載する自治体からは掲載料を取らず、寄付額に応じた手数料収入で運営するビジネスモデルを採用しているとのことです。
体験型返礼品のメリットと新制度への適合性
体験型返礼品の提供は、寄付者だけでなく、自治体側にとっても非常に大きなメリットがあると考えられます。まず、寄付者がその地域に足を運ぶことで、宿泊や飲食、交通など、地域経済への大きな波及効果が見込めます。特産品を送る際に必ず発生する商品配送の費用が不要になる点も、自治体にとって大きな経費削減につながります。ふるさと納税にかかる自治体の経費(返礼品、送料、事務費など)の合計を寄付額の50%以下にしなければならないという新制度の厳しい基準にも、配送費がかからない体験型プランは対応しやすいと言えるでしょう。
博報堂DYHDは、地域への旅行を専門とする旅行会社や、鉄道・バス会社などと連携し、自治体に対して魅力的な体験プランの企画・開発を積極的に支援されるそうです。新制度の基準である「寄付額の3割以下」という返礼品の価格設定についても、専門的な助言を行い、自治体の負担軽減を目指す方針です。この仲介サイトは、大阪府泉佐野市がギフト券などを返礼品にして多額の寄付を集め、後に問題視されたような過熱した返礼品競争から一線を画し、地域振興というふるさと納税本来の目的に立ち返るための、賢明な一手であると私は考えます。
ビッグデータ活用で地域観光を強力に支援
さらに注目すべきは、「さと いこ」を通じて利用者の寄付履歴を蓄積するデータベースを構築する計画があることです。このビッグデータを活用すれば、「どのような人が」「どの地域の」「どんなプランに」興味を持っているのかといった詳細な情報を分析することが可能になります。これにより、自治体はよりターゲットを絞った効果的な観光施策の策定や、潜在的な新たな観光資源の発掘に役立てることができるでしょう。
集積したデータを基に、自治体からのニュース配信や寄付者同士のコミュニティー形成にも活用し、一度寄付をしてくれた利用者をリピーターへと育成する仕組みも視野に入れているようです。また、このデータは、将来的にはその地域への移住者誘致**に向けた施策への活用も期待されています。体験型返礼品は、その地域の魅力を肌で感じてもらう最高の機会であり、**地域への「愛着」**を育む上でも極めて重要だと言えるでしょう。博報堂DYHDがコト消費を軸に開拓するこの新たなふるさと納税市場は、地域振興の起爆剤となる可能性を秘めている、と私は確信しております。
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