老舗アパレルメーカーであるレナウンのトップに、2019年5月に就任されたばかりの神保佳幸社長が、主力ブランドを軸とした事業再構築への意欲を明確に示されました。社長は、不振が続く国内アパレル事業のテコ入れを図るため、レナウンが誇る中核ブランドである「ダーバン」や「アクアスキュータム」、そしてカジュアル衣料の「エレメントオブシンプルライフ」の3ブランドを重点領域として、商品力とサービス力の強化を推進する考えを明らかにされています。
特に注力されるのが、高級ビジネススーツブランドとして知られるダーバンの改革です。これまで主に10万円前後の価格帯が中心だったダーバンで、今秋からは、より手に入れやすい7万円から9万円という価格帯のスーツを前年の1.5倍に増やし、本格展開に乗り出す計画だそうです。この戦略は、「高すぎる」というイメージを刷新し、ファッション感度の高い若年層の顧客層を取り込みたいという明確な意図を感じさせます。また、単に価格を下げるだけでなく、「カジュアルにも着られる機能性を高めたスーツ」など、商品のラインナップを広げることで、現代の多様なライフスタイルに合わせた提案を強化されるとのことで、これはまさに時代に即した賢明な判断だと言えるでしょう。
また、カジュアル衣料の「エレメントオブシンプルライフ」も、社長は「まだまだ伸びる余地がある」と評価し、今後の成長を見込んでいらっしゃいます。現在、総合スーパー(GMS)を中心に約260店舗を展開されていますが、今後は特に成長が見込める女性客をターゲットに、新たに10店舗程度を増やす意向を示されました。他のブランドでは店舗数を減らす傾向が見られる中で、この積極的な店舗拡大策は、同ブランドへの期待の高さを示していると言えるでしょう。国内市場が縮小傾向にある中、成長分野へリソースを集中投下する姿勢は、事業再建への強い覚悟を感じさせます。
「着ルダケ」好調!スーツレンタル事業が牽引する新たなビジネスモデル
レナウンが2018年秋からスタートした、月額制のスーツレンタルサービス「着ルダケ」事業も、非常に好調に推移しているとのことです。スーツは高価で、特に社会人になりたての若者にとっては大きな負担となることがあります。そのような背景もあり、手軽に多様なスーツを楽しめるこのサブスクリプション型サービスは、「必要な時に、必要なものを」という現代の消費ニーズを見事に捉えているため、非常に人気を集めているようです。当初、2022年までに利用者1万人達成を目指していましたが、この好調な受注を受け、目標を半年程度前倒しで達成する方向で検討されているとのことです。この成功は、アパレル産業における新しいビジネスモデルの可能性を示唆していると言えるでしょう。
このサービスの成長をさらに加速させるため、中国の委託先における生産数の拡大も検討されています。生産体制の強化は、今後の需要拡大を見越した先手を打つ、極めて重要なステップです。SNS上でも、「着ルダケ」に対する反響は大きく、「高くて買えなかったダーバンが試せるのは嬉しい」「手入れの手間が省けて便利」といった肯定的な意見が多く見受けられ、特に「若者取り込み」という観点から、このレンタル事業が大きな役割を果たしていることがうかがえます。
最終赤字からの脱却へ!国内外の役割分担で急ぐ事業立て直し
レナウンの経営状況は厳しく、2019年2月期には連結最終損益が39億円の赤字に転落してしまいました。前期は13億円の黒字であったことから、大きな経営の転換点に立たされていると言えます。この赤字の主な原因について、神保社長は、親会社である中国の山東如意科技との連携が「想定通りにいかなかった」点を挙げられています。今後は、前社長である北畑稔会長が山東如意科技との連携を含む海外事業を担当し、神保社長が国内事業の立て直しに専念するという役割分担を明確にすることで、事業再建を急ぐ方針です。国内事業と海外事業の責任範囲を切り分け、それぞれの分野で専門性を高めるこの体制は、迅速な意思決定と実行を可能にするでしょう。
特にダーバンにおいては、中心価格帯を下げて若年層を呼び込むという戦略は、一時的な売上回復だけでなく、将来の顧客基盤を築くための先行投資として評価すべきです。スーツという格式ある商品に「機能性」と「カジュアルさ」を付加し、さらにサブスクリプションという新しい購入体験を提供するレナウンの取り組みは、日本のアパレル業界全体に新しい風を吹き込む可能性を秘めています。老舗ブランドの再生と新たな市場の開拓に向けた神保新社長の手腕に、今後も注目が集まることでしょう。
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