私たちの食卓に欠かせないお肉の供給体制に、現在大きな変化が訪れています。独立行政法人農畜産業振興機構が2019年11月6日に発表した最新のデータによると、2019年9月30日時点での国内食肉在庫量は、前年の同じ時期と比べて13.4%も増加しました。合計で58万3025トンという膨大なボリュームに達しており、在庫の上昇傾向はこれで半年も連続している状況なのです。
この背景には、日本を取り巻く国際的な経済協定の存在が深く関わっています。具体的には、2018年12月30日に発効した「TPP11(環太平洋パートナーシップ協定)」や、2019年2月1日に始まった「日欧EPA(経済連携協定)」が挙げられるでしょう。これらは海外からの輸入関税を下げる約束事であり、商社などは安く仕入れられるチャンスを逃さぬよう、年初から積極的に牛肉や豚肉の買い付けを強化してきました。
しかし、供給側の意気込みとは裏腹に、国内の消費活動はどこか元気がありません。SNS上では「スーパーでお肉が安くなっているのは嬉しいけれど、節約志向で買い控えをしてしまう」といった声や、「消費増税の影響で外食を控えている」という切実な意見が目立ちます。安価な輸入肉が市場に溢れているにもかかわらず、消費者の財布の紐が固いままでは、倉庫に眠る在庫が減る気配は見えないと言わざるを得ません。
食肉市場の歪みと今後の展望
ここで注目すべきは、単に「在庫が多い」という事実だけでなく、それが経済の需給バランスを崩している点です。関税撤廃という追い風を受けながらも、肝心の出口である一般家庭や飲食店での需要が追いついていない現実は、流通業界にとって非常に頭の痛い問題でしょう。このまま滞留が続けば、いずれは価格の大幅な下落を招く可能性がありますが、それは同時に国内生産者への圧迫にも繋がりかねません。
編集者としての私見を述べさせていただければ、この現象は日本の食料安全保障の在り方を問い直すシグナルだと感じます。安価な海外製品に頼る一方で、国内の消費マインドが冷え込んでいる現状は、決して健全な姿とは言えません。自由貿易の恩恵を享受しつつも、どのようにして「食べて応援」する循環を生み出すか、私たちは今まさに岐路に立たされているのではないでしょうか。今後の価格動向と、政府の次なる一手に注目が集まります。
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