2019年6月20日、フィンランドの通信機器大手ノキアで、次世代通信規格「5G」のマーケティングを担うフィル・ツイスト副社長が、日本経済新聞の取材に応じ、5G技術が単なる高速な無線通信に留まらない、より大きな産業変革の可能性を秘めていると力強く語りました。ツイスト氏は、5Gが自動運転や「IoT」(Internet of Things:モノのインターネット)の根幹を築くものであり、今後は従来の携帯電話会社だけでなく、製造業などもノキアの重要な提携先になるとの見解を示しています。
5Gの商用化は米国や韓国で始まっていますが、ツイスト氏はまだ「初期段階」であると認識を示しました。現状では既存の「4G」ネットワークを基盤として整備されているため、真の5Gというよりは、携帯電話を用いたブロードバンド通信の延長線上に位置付けられるでしょう。欧州などでは周波数帯の不足から導入が遅れる見通しで、世界各国で本格的に普及し、誰もがその恩恵を享受できるようになるのは2023年から2024年頃になるという見解です。
5G時代を迎えると、データ通信量は毎年約100%程度で大きく増加すると予測されていますが、ツイスト副社長は、5Gの最も重要な価値はデータ通信速度ではないと指摘します。その真価は、わずか1ミリ秒(0.001秒)という**「低遅延」と、極めて「高い信頼度」にあると強調されているのです。この革新的な特長こそが、工場の自動化や遠隔操作、そして「VR」(Virtual Reality:仮想現実)といった、最先端の技術を実現するために不可欠な要素となるでしょう。
工場や自動運転を支える5Gの可能性
この低遅延と高信頼度という特徴は、まさに次世代工場や自動運転のインフラストラクチャとして欠かせません。ノキアはすでにドイツの大手企業であるボッシュと、未来の工場に関する協業を進めています。ボッシュのように、携帯電話事業者ではない製造業が政府から独自に周波数帯を取得する動きも見られることから、今後は製造業者が5Gの重要なプレイヤーとなり、ノキアの提携先として名を連ねることが増えていくと予想されます。この動きは、製造現場の効率と柔軟性を飛躍的に高める「Industry 4.0」(インダストリー4.0)の実現を強く後押しするでしょう。
私自身の意見としては、5Gが製造業にもたらす変化は計り知れません。従来の工場では実現が難しかった、生産ラインの柔軟な組み換えや、AIを活用したリアルタイムな品質管理などが可能となり、日本の製造業が国際競争力をさらに高めるための決定的な技術となるでしょう。ノキアが携帯事業者だけでなく、製造業に積極的に目を向けている戦略は、このパラダイムシフトを捉えた賢明な判断だと言えます。
セキュリティへの取り組みと楽天との提携
米国が中国のファーウェイ(華為技術)を安全保障上の懸念から排除しようとしている問題について、ツイスト副社長は政治的なコメントを控えつつも、セキュリティの問題を非常に真剣に受け止めていると述べられました。ノキアでは、製品の製造段階からサービス提供に至るまで万全の体制を敷いており、一部のネットワーク監視には人工知能(AI)**も活用されているということです。ユーザーのデータとネットワークの安全性を守るための、こうした技術的かつ厳格な取り組みは、5Gインフラを支える上で欠かせない信頼の基盤となるでしょう。
また、日本市場においては、ノキアは楽天と4G基地局設備で提携しています。楽天は、既存の通信事業者とは異なり「過去の遺産」、すなわちレガシーシステムを持たないため、ゼロからネットワークを構築できる点が大きな利点です。ツイスト氏は、この楽天のビジネスモデルをノキアにとっても良い成功事例であると評価し、全てを自前で開発する必要がないため、研究開発のコストが効率的になり、結果として「筋肉質のネットワーク」が構築できるだろうとの期待感を表明しています。
なお、ノキアは2014年に携帯電話端末事業から撤退していますが、再参入の予定はないそうです。現在流通しているノキアブランドの携帯端末は、ブランドを供与する形で提供されており、端末事業ではなく、インフラ事業に注力するという同社の明確な姿勢が伺えます。
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