欧州の経済状況を象徴する重要な指標が発表されました。欧州連合(EU)統計局が2019年10月31日に公表したデータによると、同年7月から9月期におけるユーロ圏の実質域内総生産(GDP)速報値は、前期比でわずか0.2%の増加にとどまっています。この数字を1年間の成長ペースに換算した「年率」で見ても0.8%増という結果であり、前回4月から6月期の水準から横ばいが続いている状態です。景気の力強い回復は見られず、まさに「足踏み状態」にあると言えるでしょう。
SNS上では、この停滞感に対して「欧州のエンジンであるドイツが苦戦しているのは不安だ」「貿易摩擦の影響が目に見えてきた」といった懸念の声が広がっています。特に世界経済の牽引役である米中両国の対立が、遠く離れた欧州の製造現場に影を落としている点は見逃せません。GDPとは国内で生み出された付加価値の合計を指しますが、この数値が伸び悩むことは、地域全体の稼ぐ力が弱まっていることを意味します。私たち消費者の生活にも、いずれ影響が及ぶ可能性を否定できません。
製造業を直撃する貿易低迷と「不確実性」の正体
今回の停滞の大きな要因は、域内最大の経済規模を誇るドイツの不振にあります。ドイツは輸出への依存度が非常に高い国であり、世界的な貿易の停滞がダイレクトに打撃となりました。化学大手の独BASFが2019年10月24日に発表した決算では、減収減益という厳しい現実が突きつけられています。同社の社長は、米中摩擦やイギリスのEU離脱を巡る「不確実性」が経営の重荷になっていると強い危機感を表明しました。先行きが見えない不安こそが、経済の最大の敵なのです。
景気の先行指標とされる購買担当者景気指数(PMI)も、芳しくない数字を示しています。PMIとは、企業の購買担当者にアンケート調査を行い、景気の現状を50を境に判断する指標です。2019年10月のユーロ圏PMIは50.2と、辛うじて景気判断の分かれ目である50を上回りましたが、これは2013年以来の低水準です。特にモノづくりを担う製造業においては、2月以降ずっと50を割り込む状況が続いており、現場の冷え込みは深刻なレベルに達していると推察されます。
雇用が支える消費の砦と今後の警戒ポイント
一方で、経済をどん底から支えているのが、好調を維持してきた「雇用」の存在です。2019年10月31日に発表された9月の失業率は7.5%と、2008年以来の低い水準を保っています。深刻な人手不足を背景に、企業が待遇改善を進めたことで、人々の消費意欲が維持されてきたのです。しかし、この最後の砦にも揺らぎが見え始めています。2019年10月30日に発表されたドイツの失業者数は前月から6000人も増加しており、市場の予測を大きく上回る結果となりました。
私は、現在の欧州経済は極めて危ういバランスの上にあると考えています。これまで雇用が消費を下支えしてきましたが、製造業の不振が長引けば、企業はさらなる採用抑制に動かざるを得ないでしょう。一度「雇用不安」が広がれば、消費者は財布の紐を固く締め、景気後退の螺旋に陥るリスクがあります。今後は、ドイツの製造業がいつ底を打つのか、そして雇用市場がどこまで耐えられるのかを注視すべきです。世界経済の安定には、欧州の再起が欠かせない要素になるはずです。
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