インターネットという広大な海から、また一人、時代の寵児が鮮やかに躍り出ました。2010年から活動を続ける男性シンガーソングライター、まふまふさんが放つ待望のニューアルバム「神楽色アーティファクト」が、音楽シーンに鮮烈なインパクトを与えています。自ら作詞や作曲、さらには編曲や録音までを完璧にこなすマルチな才能は、まさに現代のクリエイターの理想像といえるでしょう。
2019年6月には、メットライフドームでの単独公演を大成功に収めたことも記憶に新しいですね。ネット上では「彼の高音域はもはや楽器」「感情の揺らぎがダイレクトに伝わってくる」といった熱いコメントが溢れ、若い世代を中心に圧倒的なカリスマ性を誇っています。無名の存在から一気にスターダムへ駆け上がったその軌跡は、まさに新時代のサクセスストーリーを体現しているかのようです。
本作は前作から約2年の時を経て届けられた、魂の結晶とも呼べる2作目です。1990年代以降のJ-POPやアニメソング、そしてビジュアル系や電子音楽といった多種多様なエッセンスを、彼は驚くべき貪欲さで吸収してきました。それらを自身の感性で咀嚼し、全く新しい独自のサウンドへと昇華させています。既存の枠組みに捉われない自由な音楽性こそが、彼の最大の魅力なのです。
特に注目すべきは、その広い音域を自在に操る歌唱力と、若者特有の切実な痛みや衝動をリアルに描き出す歌詞の世界観でしょう。聴く者の心に深く突き刺さるような「ヒリヒリとした感性」は、今の時代を生きる人々が抱える孤独や希望を代弁しているように感じられます。私自身、彼の音楽に触れるたび、デジタルな手法を用いながらも、根底には非常に人間臭い情熱が流れていることに深く感銘を受けます。
クラシックとジャズの融合、そして英国ソウルの真髄に触れる
一方で、伝統的な音楽の枠組みを拡張し続ける試みも見逃せません。ピアニストの川上昌裕さんによる、ニコライ・カプースチンのピアノ作品全曲録音プロジェクト第3弾が、2019年11月にお目見えしました。カプースチンとは、クラシックの形式にジャズの語法を取り入れたウクライナの作曲家です。今回収録された「ピアノ協奏曲第5番」などは、なんと世界で初めて録音された貴重な音源となっています。
飯森範親さんが指揮する日本センチュリー交響楽団との共演は、まさに圧巻の一言です。ジャズ特有の「グルーヴ」、つまり思わず体が動いてしまうような独特のノリや躍動感と、クラシックが持つ流麗で明快な響きが見事に調和しています。まだ広く知られていない名曲に光を当てるこの試みは、音楽史における重要なミッシングリンクを埋める作業であり、知的好奇心を大いに刺激してくれるに違いありません。
さらに、海の向こうイギリスからは、ソウル界の至宝マイケル・キワヌーカの3作目となるセルフタイトルアルバムが届きました。32歳という若さでありながら、彼の声には人生の深みを感じさせる「いぶし銀」のような魅力が宿っています。1960年代後半のサイケデリックな空気感やフォークの要素を取り入れたサウンドは、どこか懐かしく、それでいて新鮮な驚きに満ち溢れています。
例えるならば、ビートルズの後期のような緻密な演奏をバックに、伝説的な歌手マーヴィン・ゲイが歌っているかのような贅沢な体験です。ソウルミュージックの愛好家はもちろん、上質なポップスを求める全てのリスナーに届くべき傑作といえます。ネット発の最新カルチャーから、海を越えた伝統の再解釈まで、2019年11月26日現在の音楽シーンは、かつてないほど豊潤で刺激的な季節を迎えています。
コメント