2019年11月27日、令和初となる政府予算の編成が本格的な局面を迎えました。2020年度の当初予算案は、2年連続で100兆円という大台を突破する見通しが強まっています。なかでも注目が集まるのは、一般会計の約7%という大きな割合を占める公共事業の在り方です。国土交通省が提出した概算要求は6兆2699億円に達し、前年度比で2割も増加しました。私たちの血税がどのように配分されるのか、その行方が議論されています。
今回の要求額が膨らんだ背景には、2019年に日本列島を襲った激しい気象災害があります。特に台風15号や19号がもたらした甚大な被害は、国民の意識を大きく変えました。SNS上では「堤防の決壊を二度と繰り返さないでほしい」「古いインフラのメンテナンスを最優先すべきだ」といった、治水対策の強化を望む声がかつてないほど高まっています。命を守るための河川整備は、もはや待ったなしの状況と言えるでしょう。
「選択と集中」が問われる公共事業の優先順位
これまでの公共事業といえば、道路や港湾、空港といった経済基盤の構築が主役でした。しかし、限られた予算のなかで防災・減災を強化するためには、既存の優先順位を見直す「選択と集中」という厳しい決断が求められます。1998年度に14兆9000億円というピークを迎えて以降、公共事業費は減少傾向にありました。近年は当初予算を6兆円台に抑えつつ、補正予算で肉付けするという手法が慣例化しています。
安倍晋三首相は、2019年度の補正予算と2020年度の当初予算を繋ぎ、切れ目なく執行する「15カ月予算」という方針を打ち出しました。自民党内からは、合計で10兆円規模の巨額投資を求める威勢の良い意見も飛び出しています。これは2002年度以来の歴史的な水準に迫る規模です。一方で、家計でいえば「財布の紐」を握る財務省は、この急激な膨張に対して非常に慎重な構えを見せているのが現状です。
大規模な事業の財源として検討されているのが「建設国債」の発行です。これは道路や橋など、将来に残る資産を作るための借金ですが、無制限に増やせば次世代への重いツケとなります。財政規律、つまり国の家計のバランスを守るためには、安易な増発は避けたいというのが本音でしょう。経済を回すための投資と、財政の健全性をどう両立させるか。この難問への回答は、2019年の年末まで続く調整に委ねられています。
世界最高水準の投資額を賢く使う「賢明な投資」へ
実は、日本の公共投資の水準は、他国と比較しても決して低くありません。国内総生産(GDP)に占める政府のインフラ整備費などの割合を見ると、2017年度の日本は3%を記録しています。これはドイツの1.8%や米国の1.9%を大きく上回る数字です。金額の多寡だけでなく、「中身の質」が問われているのです。編集者としては、単に予算を増やすのではなく、本当に必要な場所に資金が届く仕組み作りを支持したいと思います。
無駄を省くための切り札として期待されているのが、ICT(情報通信技術)の活用です。ドローンによる橋梁点検や、最新のITを駆使した検査技術を導入すれば、コストを抑えつつ安全性を高めることが可能です。また、民間の資金や経営ノウハウを公共サービスに活かす手法も、さらに深掘りする余地があるでしょう。未来を生きる世代に、借金ではなく「強靭で安全な国土」という資産を残せるか。いま、日本の知恵が試されています。
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