【徹底解説】シンガポール電力大手セノコ・エナジーが政府に公的支援を要請!丸紅・関電ら出資の巨額買収案件が直面する「供給過多」の試練と未来

2019年11月15日、シンガポールの電力業界を揺るがす大きなニュースが飛び込んできました。丸紅や関西電力などが株主に名を連ねる同国の電力大手「セノコ・エナジー」が、シンガポール政府に対して異例の公的支援を求めていることが明らかになったのです。2008年の買収当時は「日の丸連合」による海外インフラ投資の成功例と期待されていただけに、現在の苦境は日本の投資家やビジネス界にも大きな衝撃を与えています。

SNS上では、巨額の買収資金を投じた案件が赤字に転落したことに対し、「インフラ投資の難しさを痛感する」といった声や、「シンガポールのような成熟市場でも予測を外すのか」という驚きの反応が広がっています。セノコ側は、政府による融資の実施だけでなく、発電量に関わらず一定の収入を確保できるような新制度の導入も提案しており、事態の深刻さが伺えます。厳しい経営環境を打破するための必死の交渉が続けられている状況です。

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買収額2900億円の巨大プロジェクトが直面する「逆ざや」の恐怖

時計の針を少し戻すと、2008年に丸紅、関電、九州電力、国際協力銀行、そして仏エンジーの5社連合は、約36億5000万シンガポールドル(当時のレートで約2900億円)という巨費を投じてセノコを買収しました。しばらくは順調な経営を維持していましたが、2016年12月期に赤字へ転落すると、2018年12月期には最終損失が約4億シンガポールドルにまで膨らんでいます。これほどの損失を招いた最大の要因は、電力市場の「供給過多」にあります。

現在のシンガポールでは、電力の供給能力がピーク時の需要の約2倍という異常事態に陥っています。これにより、電気を売れば売るほど赤字になる「逆ざや」現象が続いているのです。逆ざやとは、販売価格が製造や運営にかかるコストを下回ってしまう状態を指し、ビジネスとしては極めて危険なサインといえます。セノコは資金不足のリスクに備え、すでに金融機関から巨額の借り換えを受けていますが、それでもなお1億から2億シンガポールドル規模の公的ローンを求めているのが現状です。

見通しの甘さと市場の歪み。電力大手が陥った負の連鎖

なぜ、これほどの需給ギャップが生まれたのでしょうか。背景には、シンガポール政府が2010年以降に進めたLNG(液化天然ガス)発電への優遇策があります。エネルギー源を多様化しようとした結果、2013年以降に新規の発電設備が次々と稼働し、市場が飽和してしまいました。さらに、高い経済成長を前提とした需要予測も、実際には想定を下回る推移を見せています。こうした構造的な問題は、他社にも影を落とし、競合のトゥアス・パワーも多額の赤字を計上しているのです。

監督官庁であるエネルギー市場監督庁(EMA)は、「投資の決断はあくまで企業側の責任である」という厳しい姿勢を崩していません。一方で、データセンターの普及による電力需要の増加など、わずかながらに明るい兆しも見えていると説明しています。しかし、この需給の歪みが完全に解消されるのは2022年ごろになると予想されており、出口の見えないトンネルはまだ続きそうです。私は、この一件が日本企業にとって、海外インフラ投資における「政治的リスク」と「需給予測」の重要性を再認識させる厳しい教訓になると感じています。

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