楽天イーグルスが「牛角」に学んだ奇策とは?1年目黒字を支えた感動経営の舞台裏

2019年11月15日、かつて球界に新風を巻き起こした楽天の戦略が改めて注目を集めています。IT企業の雄として参入を果たした楽天は、野球に関しては全くの素人集団でした。しかし、その「門外漢」ならではの柔軟な思考こそが、スポーツビジネスの常識を次々と塗り替えていく原動力となったのです。

まず着手したのは、球団の心臓部となる本拠地の選定でした。三木谷浩史社長が頼ったのは、TSUTAYAを運営するCCCの増田宗昭氏です。レンタル店の膨大な顧客データを分析し、ファン層の厚さを導き出した結果、候補に挙がったのは名古屋と仙台でした。中日ファンの地盤が固い名古屋を避け、隣県からの流入が見込める仙台を最終候補に定めたのです。

SNS上では「データに基づいた冷静な判断が、今の熱狂的な東北の応援団を作ったのだと思うと感慨深い」といった声が寄せられています。2004年の参入決定時、宮城県とは驚くべき契約を交わしました。老朽化した宮城球場の改修費30億円を負担する代わりに、営業権を独占し、年間賃料を8000万円という破格の条件に設定したのです。

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焼肉店から学んだ「意図的な感動」の作り方

ハード面が整った次なる課題は、いかにしてスタジアムをファンで埋め尽くすかでした。ここで島田亨球団社長にヒントを与えたのは、焼肉チェーン「牛角」の創始者である西山知義氏の言葉です。「顧客の期待値を少しでも超えることで、意図的に感動を生み出す」というサービス業の極意は、野球界にも共通する真理でした。

この「期待値を超える」とは、単に満足してもらうだけでなく、予想外の驚きを提供することを指す専門用語と言えます。楽天はスタジアム内を走る列車の運行や、子供たちが選手を迎える「スタメンキッズ」など、野球そのもの以外でも楽しめる演出を次々と導入しました。これらはまさに、プロの仕事として設計された「感動の仕掛け」でした。

私は、この楽天の姿勢こそが現代のエンタメビジネスの正解だと確信しています。試合の勝敗はコントロールできませんが、観客が過ごす時間の質はコントロール可能です。大リーグ視察を経て取り入れられた観覧車やクイズ演出などは、単なる球場を「アミューズメントパーク」へと進化させる素晴らしいイノベーションだったと言えるでしょう。

戦略的な演出が功を奏し、楽天は参入1年目にして黒字達成という快挙を成し遂げました。一方で、チーム力は38勝97敗と圧倒的な最下位に沈みます。島田社長は「負け続けてはお客さんが離れる」と危機感を抱き、次なる一手として「闘将」星野仙一氏を招聘しました。東北を熱くするための物語は、ここから新たな章へと進んでいきます。

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