日本のスタートアップ界隈に、これまでにない新しい資金調達の選択肢が登場しました。あおぞら銀行は2019年11月上旬、国内初となる「ベンチャー企業の社債」に特化した投資ファンドを設立したのです。子会社のあおぞら企業投資が運営を担い、まずは20億円規模でスタートを切りました。今後は地方銀行などからも広く出資を募る方針で、1年後には総額100億円という大きな規模を目指す計画です。金融界の新しい試みに、多くの投資家や起業家が熱い視線を送っています。
SNS上では、今回の発表を受けて「株式を手放さずに資金を借りられるのは画期的だ」といった経営者からのポジティブな意見が目立ちます。これまでのベンチャー支援といえば、ベンチャーキャピタル(VC)による出資が主流でした。しかし、出資を受ければ受けるほど経営者の持ち株比率は低下してしまいます。これを「希薄化」と呼びますが、自分の会社をコントロールし続けたい創業者にとって、この希薄化は常に頭を悩ませる大きな課題となっていたのです。
融資と出資のいいとこ取り?注目の「ベンチャーデット」とは
今回あおぞら銀行が採用したのは、「ベンチャーデット」という手法です。これは、投資先行で赤字になりがちな新興企業に対し、将来株に転換できる権利などが付いた「社債」の形で資金を供給する仕組みを指します。貸借対照表(バランスシート)上では「負債」として扱われるため、経営権を維持したまま、まとまった事業資金を確保できるのが最大の特徴でしょう。米国では一般的な手法ですが、リスクを嫌う傾向にある日本の金融界では非常に珍しい挑戦といえます。
本ファンドの投資対象は、人工知能(AI)やヘルスケアといった、今後の成長が期待される最先端分野の企業です。すでに運用は始まっており、2019年11月には第1号案件として、調剤薬局向けの革新的な薬歴管理システムを手掛ける「株式会社カケハシ」の社債引き受けが決定しました。投資期間は5年、運用期間は合計10年という長期的なスパンで、じっくりと企業の成長を支えていく構えです。銀行側にとっても、上場後の融資取引を見据えた先行投資としての意味合いが強いようです。
編集者としての私の視点では、この取り組みは日本のスタートアップ文化を成熟させる大きな一歩だと感じています。銀行という保守的な組織が、あえて「赤字でも将来性がある」ベンチャーに寄り添う姿勢は、資金循環の停滞を打ち破る可能性を秘めています。もちろん、倒産リスクという壁はありますが、こうした挑戦的なマネーが日本に増えることで、次世代のユニコーン企業が誕生する土壌が整うのではないでしょうか。今後の100億円達成に向けた動きから目が離せません。
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