アパレル業界に今、新しい風が吹いています。2019年に入り、顧客と直接つながる「D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)」というビジネスモデルが急速に注目を集めています。D2Cとは、メーカーが中間流通を介さず、自社サイトなどを通じて消費者に直接販売する形態を指します。この流れに乗るように、大手アパレルのワールドが、婦人靴ブランド「gauge(ゲージ)」を展開する神戸レザークロスを傘下に収めたというニュースが飛び込んできました。
ワールドは2019年春にも米国のカスタムシャツ企業を子会社化しており、今回の買収によって「パーソナライゼーション(個人最適化)」の領域を靴にまで広げる狙いです。SNS上でも「自分にぴったりの靴が見つからない」「左右でサイズが違うから苦労している」といった働く女性たちの切実な声が溢れており、この取り組みには大きな期待が寄せられているようです。
職人の技が光る!138万通りの組み合わせから選ぶ至高の一足
神戸レザークロスは、靴の原型となる「木型(きがた)」を作る高い技術力を持っています。木型とは、靴の形を決める土台となる模型のことで、ミリ単位の精度が求められる職人の世界です。この「gauge」というブランドは、同社の女性木型師である五十石紀子氏の情熱から誕生しました。ハイヒールは靴ひもがないため、少しのズレが足の痛みや体の負担に直結してしまいます。五十石氏自身もかつてヒールで働く悩みを抱えていたからこそ、その視点は非常に誠実です。
驚くべきは、そのパーソナライズの精度でしょう。最新の3D計測器で足を測定するだけでなく、肌の硬さや歩き方の癖まで考慮し、左右別々のサイズを提供してくれます。デザインや素材の組み合わせは、なんと138万通りにものぼります。単なるデータ任せにせず、最後はプロの知見でフィッティングを行うスタイルは、デジタルとアナログの理想的な融合だと私は感じます。
リアルとネットを使い分ける、賢いブランド戦略
「gauge」の歩みは決して平坦ではありませんでした。当初は百貨店での展開を試みたものの、リピーターの確保に苦戦したといいます。そこで、D2C支援会社の助言を得ながら、集客はインターネット、採寸はリアルという現在のハイブリッドな形に辿り着きました。一度計測すれば、2回目以降はネットで簡単に注文できる仕組みです。このように、顧客体験の核心部分に絞って対面接客を行う戦略は、今の時代において非常に効率的で理にかなっています。
2019年9月24日には、クラウドファンディングサイト「Makuake」にて目標を大きく上回る約700万円の支援を達成したことが話題となりました。以前は「オーダー靴は難しい」と言われていた市場で、ブランドの存在意義を丁寧に伝えたことが成功の鍵だったのでしょう。SNSでの拡散も後押しし、現代の働く女性たちの共感をしっかりと掴んだようです。
私は、こうした「自分の体を大切にするための投資」が当たり前になる社会を歓迎します。3万5000円からという価格は決して安くはありませんが、健康と自信を手に入れられるのであれば、それは十分な価値があるはずです。日本の職人技がテクノロジーと手を取り合い、一人ひとりの悩みに寄り添う姿には、ファッションの明るい未来を感じずにはいられません。
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