日本のものづくりを支える司令塔が、労働者の未来を守るために力強い一歩を踏み出しました。自動車や電機などの主要な製造業労組で構成される金属労協は、2019年11月25日に、2020年の春季労使交渉(春闘)における指針を固めたのです。注目すべきは、基本給を一律に底上げする「ベースアップ(ベア)」の要求額でしょう。彼らは月額3000円以上という、2019年と同水準の旗印を7年連続で掲げる方針を明らかにしました。
「ベースアップ」とは、年齢や勤続年数に応じて上がる定期昇給とは異なり、全従業員の給与水準そのものを引き上げる仕組みを指します。米中貿易摩擦などの影響で、製造業を取り巻く経営環境には厳しい逆風が吹き荒れているのが現状です。しかし、金属労協は、日本経済を再び活性化させる「景気の好循環」を維持するためには、賃上げの手を緩めてはならないと強く判断しました。この方針は2019年12月4日の協議委員会で正式に承認される見通しです。
今回の決定に対し、SNS上では「先行きの見えない不況下でもベアを求める姿勢は頼もしい」といった期待の声が上がる一方で、「企業の減益が続くなか、どこまで妥結できるのか不安だ」という慎重な意見も散見されます。労働組合の中央組織である連合も、2020年の交渉で2%程度のベアを求める方針を打ち出しており、定期昇給分を含めた4%程度の賃上げを狙っています。官民挙げての「賃上げムード」が、現場にどこまで浸透するかが焦点となります。
格差是正への挑戦と製造業が直面する厳しい現実
金属労協の取り組みは、単なる一律の賃上げに留まりません。彼らは企業規模や年齢層に応じた「あるべき賃金水準」や、最低賃金の目安を具体的に提示する構えを見せています。これは、大手企業と中小企業の間で広がり続ける「賃金格差」を是正し、産業全体の底上げを図るという崇高な狙いがあるからです。誰もが安心して働き続けられる環境作りこそが、日本の製造業の競争力を維持する鍵になると信じているのでしょう。
一方で、足元の業績データは決して楽観視できるものではありません。日本経済新聞社の調査によれば、上場企業の2019年4月から9月期までの決算において、純利益の合計は前年同期比で14%も減少してしまいました。特に製造業は31%減益という大きな打撃を受けており、中国景気の減速が影を落としています。こうした逆境下で、労働側の要求がどこまで企業の経営層に響くのか、これからの交渉はまさに正念場を迎えることになります。
筆者の見解としては、目先の利益確保も重要ですが、人手不足が深刻化するなかで「人材への投資」を惜しむことは、長期的な衰退を招くリスクがあると感じます。企業側が不透明な先行きの防波堤として内部留保を厚くしたい気持ちも理解できますが、労働者の購買力が上がらなければ、国内市場の冷え込みを止めることはできません。2020年1月から本格化する各産別労組と企業との対話が、未来を切り拓く実りあるものになることを切に願います。
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