2019年11月08日、日本の労働環境を大きく左右する重要な指針が示されました。流通や外食、繊維など私たちの生活に密着した産業の労働組合が集まる「UAゼンセン」が、2020年の春季労使交渉(春闘)において、正社員の基本給を一律に引き上げる「ベースアップ(ベア)」を2%程度求める方向で調整に入ったのです。
UAゼンセンは、約2300もの組合が加盟し、179万人という圧倒的な組合員数を擁する日本最大の産業別労働組合です。特筆すべきは、その組合員の約6割がパートタイマーなどの短時間勤務者である点でしょう。今回の交渉案では、正社員だけでなくパート職の方々に対しても、同水準の賃上げを要求する方針を打ち出しており、働くすべての人の生活を底上げしようとする強い意志が感じられます。
5年連続の「2%基準」に込められた内需主導の成長戦略
今回の要求が実現すれば、正社員のベア要求は2014年から数えて7年連続、そして「2%基準」としての要求は5年連続となります。世界的に景気後退の不安が囁かれる2019年現在の状況下で、あえて高い水準を維持する背景には、賃金を上げることで消費を活性化させ、国内の需要で経済を回す「内需主導の成長」を止めてはならないという明確な狙いがあるようです。
ここで注目したいのが、2020年04月01日から本格的に導入される「同一労働同一賃金」への対応です。これは、正社員か非正規雇用かという雇用形態の違いだけで、給与や手当などの待遇に不合理な差をつけてはならないという新しいルールを指します。UAゼンセンの素案では、格差が認められる場合には是正を強く求めていくとしており、不当な待遇差の解消が今回の交渉の大きな柱となることは間違いありません。
非正規の賃上げ率が正社員を凌駕!進む待遇差の縮小
2019年の実績を振り返ると、パートの方々の平均賃上げ率は2.55%と、5年連続で過去最高を塗り替えました。一方で正社員は2.03%に留まっており、4年連続で非正規層の伸び率が上回っています。SNS上でも「パートの時給が上がるのは切実な助けになる」「同一労働同一賃金が名ばかりにならないよう、労組の交渉力に期待したい」といった、生活実感に根ざした期待の声が広がっている状況にあります。
編集者としての私見ですが、労働力の確保が困難な現代において、非正規の方々の待遇改善は企業の生存戦略そのものであると確信しています。単なるコスト増と捉えるのではなく、働く人の意欲を引き出す「投資」として捉えるべきでしょう。2020年01月末の中央委員会でこの要求が正式決定されれば、日本の賃金構造がより公平な形へと進化する大きな一歩になるに違いありません。
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